そこにある世界を、徹底的に破壊する快楽

本作に無数に存在する魅力のうち、特に感銘を受けた三点を挙げさせて頂きます。

まず一つ目は、冒頭からこれでもかと見せつけられる、徹底的に練り上げられた世界観。
退廃的かつ、世界構造そのものから変質してしまった世界を、重ね重ね、繰り返し丁寧に描写することで、読者に世界のルールと本作の読み方をしっかりと伝えてることに成功しています。

そして二つ目。物語冒頭で確立された世界観が揺らぎ、変節していく様が、物語中盤では流れるように描写されます。一度完全に確立されたはずの世界観が一気に不安定なものとなることで、物語の続きを読まざるを得ない状況へと読者を追い込みます。

そして三つ目。中盤でバランスを失ったネクロアリスの世界は、終盤において決定的な破局を迎えます。しかし、この破局は全て作者様の緻密な計画性の上に成り立ってのこと。読者は、本作を娯楽として楽しみつつ、物語冒頭で確立された世界の破局と崩壊、そして終わりと再生を、傍観者として味わうことが出来ます。

最後まで読了し、本作の面白さをまとめるとすれば、それはさまに始まりと終わりの物語と言えるでしょう。
第一話を開いた際に産声を上げた物語は、最終話で美しくその命を全うした――。

私には、そう思えてなりません。


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