六通目

拝啓、


 今宵の装いはシルクのパジャマ。お上品なあなたにはとてもお似合いです。そしてリビングソファーに腰掛けて優雅にワインを嗜まれるその佇まいは私を惹きつけます。外灯の光すらも届かないこの洋館で、天井に吊るされたシャンデリアの下、ワイングラスを乾杯できたらどれだけ幸せなことでしょう。


 お手元の本は読み終わって次の物語に移行したようで、今度は国内文学ですね。知的な印象を併せ持つあなたにはとてもお似合いです。あなたと同じ空間で私も本を読むとその世界に二人して転移したように錯覚します。そしてその時は至福の時間であります。


 宵の寛ぎは綺麗な長い黒髪が湿っていて、そのお身体からほのかに入浴後の石鹸が香ります。それは私の鼻孔を甘く刺激し、意識を遠くに飛ばしてしまうほど魅惑的です。眠りに就く時は是非とも夢の中でお会いしたい。


敬具

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