三通目

拝啓、


 新緑の季節となり、この洋館に差し込む木漏れ日にも趣があります。陽の光は敷地の南面の広い緑の庭を照らし、花壇に水を撒くあなたを美しく魅せます。その花壇に咲くユリ、アヤメ、カスミソウは綺麗に花びらを開き、穏やかな表情のあなたを歓迎しているようです。


 敷地の端の、この森の斜面の頂上に当たる場所にある木々は緑の葉が生い茂り、その木々を背景に手元の花壇と一緒にあなたがとても素晴らしい被写体となります。それらを額縁に入れてしまい、永遠の美として残せたなら崇高な芸術となるでしょう。


 ただ、あなたの透き通るような肌を保護するためにも、長時間の屋外をお勧めできないことが残念です。それでもどこにいても佇まいの美しいあなたは絵になり、魅了させてくれます。


敬具

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る