実際このレビューを書くまでに数回読ませていただいていたのですが、
「ひゃい!」
のところで笑ってしまうようになりました(笑)。
菜の花と言えばおひたしのイメージですが(千葉県人の異論は認める)、ここでの菜の花は相当ゴージャス。飯テロにもほどがあります。
(もちろん私は食事後に読むことにしておりますよ)
美味しいものを知っている男って、なんですかね、魅力的なんですよね。こだわりとか単純な言葉では言い表せない魅力。なんというか、嬉々として語るじゃないですか。その情景がありありと浮かぶ感じ。
みなさん語ってらっしゃいますが、江田さんの情景描写は本当に素敵です。「星の声 空の想い」もそうでしたけど、目の前に美しい情景が広がるんですよ。
そんなわけで、読み返すごとに深みを増す、味のあるお話です。
日本人の忍耐強さというか、どこか不器用な生き方は、やはり海外の方々には奇異であり、ときに羨望やときに畏怖として映るらしい。
日本人を怒らせるにはどうしたらよいか、という海外のジョークがある。
そう、食べ物である。
不味いと言われれば、その美味しさを力説したくなるもの。
これが、美味しい話である。
これが、日本人である。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、よろしい、ならば胃袋だ。
大人になった今だからこそ、教師にも生徒にも共感出来る。素敵な作品だった。
思い出すのは、この話題を振るとこの先生は語り出し授業を潰してくれるという悪知恵を働かせる幼い自分である。随分、授業を遅らせたものだった……
先生、ごめんなさい。
そして。
この作品、御馳走様でした。
国語教師がこのお話の主人公という事で、初めのうちは「菜の花」を文学的視点から語っているものですが、まだまだ子供子供している生徒のひと言から食という視点へ移行します。
こういう光景は小学校から進級して来たばかりの中学生くらいなら有りがちですねぇ。
話が脱線してしまったが為に本来の授業が満足に進まずに終わるという(笑)
しかしながら、この先生……実に菜の花の食材としての魅力を巧みに語っています。
食べ物だったとは知らない子供もいる。美味しくないという先入観を持っている子供もいる。
そんな中で「食べてみたい」と思わせる語り口はお見事。
本来の授業とは違ってしまったものの、食育という観点で見れば「先生、良かったですよ」と言ってあげたいものですね(笑)