警察が主人公のものを除くと、公務員が主人公の小説はかなり珍しいと思いますが、この作品はその一つで、出向中の県庁職員が寂れてしまった地方観光都市(町)で奔走するという物語です。
出向中、つまり一時的に出向いていて、2、3年後には出向元に戻るということが行政の仕事にはよくあるのですが、それで実際に熱意があまりない職員というのもいるかもしれません。
そんな職員と、冷めた目で見る町民たち、間に挟まれ孤軍奮闘する主人公の悩みが、痛いほど伝わってきます。
それでも、もう一度観光客で賑わせたいという情熱は、光となり兆しとなり……☆
どんなアイディアを思い付いたかも見物です!
そして、もう一つ恋の情熱も……♪
県庁職員という、一見堅苦しそうなお仕事小説ですが、丁寧な文章、かつ現場のリアルな描写で、とても読みやすいです☆
オススメです!
村興し的な行政の内部を感じる事の出来る作品。観光産業を復活させようと奮闘する物語で、そこに恋愛要素が絡み合う作品です。
主人公の夏海は新社会人。彼女が受ける社会の荒波。その中で頑張っていく姿が応援したくなります。
恋愛要素よりも仕事要素の面白さが多分に仕込まれているのが印象的でした。
夏海の心情の変化は読み手の心をくすぐると思います。仕事に対す考え方や出会う人々への視点等の変化は新社会人らしさが伺えます。そして彼女の性格がまた前向きで真摯で、とっても好感が持てました。
ちょっと大人な社会組織なさ堅さのある作品ですが、一読の価値ありです。
鄙びた観光地。どこを見ても、観光客招致に失敗した残念な残骸ばかり…
そんな廃れそうな観光地を再び活気のある場所に!担当部署へと配属された若手女子県職員の夏海は、その業務に真正面から取り組みます。
抱える問題点に対し、行政を担う者として何をするべきか。一職員の立場から具体的なアクションを起こすのは、実は至難の技。夏海は、そんな障害をどう交わしていくのか。
民間と行政の間にある温度差を真剣に悩み、アイデアを打ち出そうとする夏海の姿はまっすぐに前向きです。彼女は、この仕事を成功に導けるか?そのアクティブさを応援せずにはいられません。
仕事って、苦労も多いけどやっぱり素敵!そう思わせてくれる、前向きな爽やかさに溢れた物語です。
「働くヒト」コンテストの裏コン参加作品。
寂れた温泉街を県庁職員の夏海が、仲間たちと再興していく物語です。
まさしく「働くヒト」たちの奮闘を描くのに相応しい舞台設定、登場人物が用意されております。
短編ながらきっちりとリアルな考証がされており、このままテレビドラマ化されてもおかしくない醍醐味が味わえます。
さらに作者のお家芸である若いカップルの恋愛も絡められ、一層物語の厚みを増しております。
いかに残念半島が復興していくのか、夏海ちゃんに感情移入して、ドキドキしながらご覧ください。
そして、第二部を楽しみにお待ちください。
あっ、これは勇み足でした。
「頭が良い」ってなんだろう?
最近よく思うんです。日本社会においては多くの大人たちが理想と現実の狭間で働いていますが、実際は自分の願望を押し殺しながら、組織の一員として、役割を演じる歯車として「やりたくもない仕事」をこなしていることが多いんだな、と。官公庁、民間問わず。若くしてエリートと呼ばれる人ほどそんな気がします。
ラテン系の人たちからは「お前ら、バカなの? まったく理解できないんだけど?」くらい言われてそうなんですが、実際、個人的な話を抜きにしても、効率とかとか物事の本質とか、どの観点から見てもおかしい仕事って、世の中にはいっぱいありますよね。
そんなフラストレーションのたまる現代社会をぶち壊し、スカッとさせてくれる、そんなお話です。
読後に「あたまでっかちじゃ務まらない女将の仕事って、実は夏海にとって天職なんじゃないか?」なんて思い、最初のころを読み返すと、彼女自身の成長ぶりが伺えてしみじみきました。
変わって行くことを「悪」だと考えて全て否定しようとする人がいます。でも、変わって行かないと前には進めません。前に進まなければ、築かれた伝統や歴史も埋もれてしまいます。それは決してあってはならないことです。
主人公の夏海ちゃんの思いを突き詰めていくと、そういうことではないでしょうか? まさにプライスレスな物を守るために一生懸命がんばった印象があります。
がんばっていた彼女は輝いていました。そんな輝きは人を引き寄せました――そして、素敵な人が現れたことで、彼女はもっと輝きました。
お話を読み終えた後、心の中で呟きました――「残念半島とみんなに幸あれ」って。