「お仕事モノ」は美しい文学になり得るのだ

読了がコンテストの期間内にならなかったことをまずお詫びせねばなりません。
でも、読み始めた時から毎回、続きを楽しみにしていました。

イギリスの地で暮らした人々の息遣い、悲劇と喜劇とが交錯する様子を、英国情緒という言葉で片付けてしまうのは忍びないし、ミルドレッドに叱られそうです。
しかし、英国の文化を織り交ぜたこの作品に現れる彼らの暮らしには、やはりある種の気高さを感じずにはいられない。

もちろん、その良いところも悪いところも、この物語の中では語られています。
そうした国の歴史とそこに暮らす人々の歴史が文字通り積み重なって雁字搦めで動けなくなる。
そんなしがらみを捨ててしまえば早いのかもしれないけど、しがらみというのは歴史であり、その人の人生そのものでもあるわけで、そう簡単にもいかず、「じゃあ、どうするの?」ということを考え、なんとか方法を模索していく様は、まさにお仕事モノでもあります。お仕事モノを思い切り踏み込むと、こうなるのかと脱帽しました。


お仕事モノの定義を広げ、人と国と文化の中で、それらを受け入れて前へと進む圧倒的な人間賛歌。

壮大ではないけれど重厚な、それでいてさりげなくて親しみやすい、人と歴史の物語。



ぜひぜひ読んで欲しい一作です。

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