読めば胸が苦しくなる……

 これは「誰かに校閲・しっかりとした(略」用の辛口レビュとなります。

 物語の描き方が上手でした。
 父と母の花と病、そして恋を引っかけて最後まで流れていく。物語に詰め込む情報量と、結果の文字数が丁度良いバランスです。

 ただ問題なのが、なかなか上手なので悪い点が巧妙に隠れてしまっている。
 一見すると悪いように見えないのに、引っかかる。違和感がある。それがこの小説の大きな問題点です。

 ちょっと時間をかけて分析しました。この小説が愛おしいから辛口になります。決して貶す目的でない、愛があるからだ! としっかり受け止めてからお読みください。


 まずさわり。中学三年生で初めて恋を知る、という設定に無理があります。せめて小学生くらいが良いかな?
 中三で恋を知る、という設定が悪いわけではありません。ただ中三まで恋を知らない人は希有です。希有な設定を読者に示さないまま使うことに無理があるのです。
 この設定が必要であれば、何かしら読者に示さないといけません。
 設定で引っかかると、物語よりもそちらのほうが気になり、没頭感が損なわれます。

 さて次ですが、これが問題の根幹。
 物語のはじめにある菊の説明。「幼い頃から」とありますが、その次に出てくる「小学二年生の時」とある小学二年生も、十分幼い頃です。
 なので、語り始めた「僕」がどこの時代の「僕」なのかが判らなくなる。

 また、葬式の後に菊の花を見て
>>父がいなくなってしまったことが現実味を帯びてきたのだ
 というのも流れがおかしい。
 何故か? おそらくそこに「両親は菊が好き」という設定と、母の感情がないから。

 両親は菊が好き→父が死ぬ→母は父を思い出すから菊が飾れない→菊が飾られないことでなにかが欠けたことに気づく→父がいない。
 
 このような流れがスムーズではないでしょうか?
 少なくとも菊が飾っている家はきー君にとっての日常ですので、飾り続けると父が失われた変化・非日常が感じられません。だから「気づき」に無理が生まれる。

 また上記は「花を見れば父を思い出すから」という部分が最後の「恋の花は、これからも僕らを苦しめる」にも繋がります。
 決定的な離別の後も、花は人を苦しめ続けるのだ、という隠喩ですね。

 このように、色々と不自然な流れ・無理な点・謎の設定が多々あります。これが物語に大きな違和感として現われている。
 これがまっすぐ、綺麗に描けるようになれば、この物語はもっともっと胸に突き刺さるようになるでしょう。

 非常にもったいない! だからこそ、かなり辛口の指摘となってしまいました。
 今後とも頑張ってください!