さあ、青春を始めよう!
- ★★ Very Good!!
これは「誰かに校閲・しっかりとした(略」用の辛口レビュとなります。
運動部系の小説は、成り立たせるのが非常に難しいジャンルです。
にもかかわらず、次を読み進めたくなるほど面白みがあり、試合でもきっちり動きが描かれている。そこにいつきさんのバスケへの強い愛と知識が感じられました。
まず細かいところから。(甘口)
安易な擬音は削りましょう。例:キーンコーンカーンコーン。
例に関しては「チャイム」とあれば十分通じますので……。
次に「てにをは」と各品詞の組み立てがやや怪しいです。おそらく推敲不足なのかな? とは思いますが……一応。
「に」と「へ」の距離感や、品詞の美しい並びなど。ネットに詳しいページがあるので、今一度確認してみてください。
甘口最後に、アイシングスプレー→冷却スプレーなど。用語や説明は初心者でも判るように書きましょう。
略語・専門用語の正式名称や一般用語・商品名など、意識して変化を付けてみてください。(おそらく混同している部分があります)
特にスクリーンプレイの説明は、現状では伝わりません。かなり難易度が高いですが、頑張ってみてください。
さてここから辛口です。
この小説の一番の問題点は「構成」かと思われます。
バスケの物語であるのに序盤に人間ドラマから初めてしまうと、人間ドラマが主軸で、バスケがサブであるかのように感じられてしまいます。
いつきさんの強みはバスケットボールです。バスケに関して描かれている部分は、他の人間ドラマに比べてかなり強い色彩を持っています。
なので序盤の部員を集めるドラマシーンから始めるのではなく、バスケをメインプロットにして「これはバスケの物語だ」と読者に明示し、その過程で人間ドラマ(サブプロット)を挟み込んでいく方が良いでしょう。
(例:一年生に負けたから「こんな寄せ集めの雑魚チームでやってられっか!」と茉莉花が言いだし、彼女のドラマが展開される、など)
上記に絡みますが、演出として1年生男子との初戦は大敗させた方が、その後の勝利が物語になりやすいです。
このように、全体を通してどうすれば物語を「演出」出来るか? 特に挫折・解決を組み込むタイミングを注意しながら既存の物語を分析してみてください。
次に、中学生設定がちょっと弱い。現状だと高校生のようです。
入射角が~って中1に聞かせても、よほど偏差値の高い中学校でない限り、「数学?」ってすぐに出てきません。
おまけに教師に対してはじめから少し近すぎます。中一女子って、もっと大人の男が怖くありませんか?
上記のような中1の生徒と教師の力・距離感が対等に近かったり、教師の知識に対する生徒の理解度の高さなど、中学生というより高校生に近かったです。いっそのこと高校生にしてしまった方がすっきりする程でした。
中学生設定で行くのであれば、もう少しはじめは距離感があったり、知識に対して無理解だったりした方が良いでしょう。
三つ目ですが、視点変化による語彙変化がないのはいただけません。(甘口最後の指摘にも通じることですが)
三人称でも一人称のように、視点の主軸になった人物に合わせて語彙が変化します。
そういう細かい部分でも、いま誰にカメラがあたっているかが判るんですね。
視点の軸となる人物の地の文が、“それまで作中で提示されていない情報”を用いていると「神視点」になりますので注意してください。
一例ですが、バックボード。
バスケを知らない人が「バックボード」という言葉を知っているでしょうか?
おそらく知りませんね。知らないということは、会話文でも地の文でも使えない用語になります。
登場人物のIQに併せて語彙を変化させるのがベストですが、それは非常に難しいので、まずは「その人物が知り得ない情報は削除なり変化させる」ことを意識してください。
最後に、バスケ部分は素晴らしいのですが、ドラマ部分が弱いです。情報・感情・変化などの粗が少々目立ちました。
物語性は良いです。ただ物語を補強する情報への突っ込みどころが多かった。
父親の死に掛かるあれこれ。これは法的に真なのか?
先生が家庭の事情を知らないなどあり得るのか?
先生が凄いところを見せて、凄いと思ったのに、何故なにも変化がないのか?
運動部で成績が下がるという根拠は?
部活に入らなければいけないのに、部活を辞めさせるなんて出来るのか? 等、かなりあります。
物語の根幹はバスケなのに、バスケ以外の部分で気が逸れてしまうのが非常にもったいない。
細かい部分で読者の集中力が途切れないように、誤魔化すテクニックを身につけたり、突っ込まれないようバスケくらい知識を身につけるなど、なんらかの対策を行いましょう。
以上、辛口になって申し訳ありません。
今後とも頑張ってください!