メジャー武将から一歩進んだ関ヶ原のお話

 戦国時代、毛利家、に仕えた僧侶である安国寺恵瓊(えけい、と読みます)の視点で書かれた関ヶ原です。
 戦国時代には、僧侶がよく外交の要として、またブレーンとして活躍します。恵瓊もその一人です。実は大河ドラマ『軍師官兵衛』にも登場していたので、知っているひとは知っている! ――はずですが、ぶっちゃけほとんどのひとは知らないひとですよね。
 まずは、そんな恵瓊を取り上げてくださった作者様の慧眼に感謝します。(私事で恐縮ですが、毛利好きなんです……)

 ちょっと歴史にお詳しい方なら知っている関ヶ原前後の毛利輝元&小早川秀秋エピソード、どうしてあの毛利家がそんな失態を!?というポイントが散見されるわけですが、なるほどこちらの作品のように恵瓊が裏であれこれ画策していたのだと思えば納得できます。
 はたして恵瓊は何をどこまで計算していたのでしょう。こうして何もかも恵瓊の策のとおりに進んでいたのなら、天晴れ! さすが俺たちの恵瓊!!
 可哀想なのは残される広家ですが……本当に、彼が歩むのは茨の道なんでしょうね。でも、毛利が滅びることはない。それもそれもこの作品では全部恵瓊のおかげです。恵瓊すごい! 恵瓊かっこいい!
 最後、すっきりした気持ちで逃げ出す(ふりをする)恵瓊。きっといい人生だったのでしょう。六十年の禅僧生活が報われたようです。毛利のため、自分の宿願のため、に重ねて次世代の僧侶たちのことまで案ずるところには器の大きさを感じます。
 私の読後感もすっきりです。

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