アニメまで俺を裏切るか

アイオイ アクト

アニメまで俺を裏切るか

 一人暮らしを始めてから、もう何年経つのだろう。


 足の踏み場も無かった部屋は、昨日突然思い立ち、片付けを済ませた。

 今季、期待しているアニメを見るためだ。

 仕事が忙し過ぎて、三話程溜まってしまった。


 初々しい恋愛をテーマとした作品。

 それこそ、俺が常に欲しているものだ。


 再生ボタンを押す。

 期待通りの作画、期待通りの音楽、期待通りの冴えない主人公に、ふんわりした少女。


 だがしかし、俺の脳は、テレビの奥に広がる光景に、酷く掻きむしられた。

 知っている。この場所もあの場所も、どの場所も知っている。


 たくさん、覚えている。

 その道、その神社、その境内の裏側、そのお祭りの準備。


 流されるままの、いい加減な恋愛ばかり重ねてきた俺が、初めて自分から合わない時間を合わせ、遠い距離を必死に埋め、触れ合う時間を重ねて、気持ちを伝えた。


 やめてくれ。やめてくれ。やめてくれ。

 お前達、他所でやってくれ!その神社の裏は、俺と、あの子の場所だ。


 三年間。

 三年間だぞ。そこはあの子の故郷で、俺とあの子の場所だ。

 何を勝手に語り合っているのだお前達。

 返してくれ。返してくれよ。そのお祭りに参加しないでくれ。

 そのお祭りの舞台に立つあの子の近くに寄って怒られるのは、俺の特権だ。

 お前達のものではないんだ。


 返せよ。返してくれ。俺の、俺の場所なのに。

 アニメまで、アニメまで俺を裏切るか。


 

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