次々とひっくり返される人間模様に幻惑されてしまう

ミステリーではなく、ミステロイド。
ミステリーもどき、と言った意味合いで名付けられた題名には、さまざまな意味が込められています。

ともすればアンフェアに取られがちな、次々とエスカレートして行く人物たちの真実。中編だからこそ間延びせず、矢継ぎ早にそれらの設定を上書きし、畳み掛けることで、不思議と説得力が生まれています。

荒唐無稽にも取られかねない「設定のどんでん返し」に注目しながら読んでもらいたいですね。
あえて逸脱させつつ、それでいて犯罪の状況に整合性を持たせる筆力に舌を巻きました。
華やかな女子高生たちの愛憎、アリバイ崩し、証拠品の配置など、全て計算されて書かれていることが判ります。

綺麗にまとまった普通のお話なら、掃いて捨てるほどあります……が、そんなものに何の意味があるでしょうか?
そんな「凡作」は、埋もれてしまいます。公募に出しても「ありきたり」で済まされるでしょうね。
だから、新解釈が必要になる。
この小説のような、ちょっとズレた要素が欠かせません。
自由に書けるウェブだからこそ、実験的な意欲作を生み出せると思うんです。

どんな内容だろうと、作中に説明があり、その範囲内で真相が類推できるのであれば、それはフェアなんです。

こうした才能が、ミステリーの新たな地平を切り開く次世代の原動力になるのだと確信します。
かつて麻耶雄嵩や京極夏彦がそうであったように。