物語のずば抜けた面白さ。高尚な表現。その上で非常に読みやすい読者目線に立った文体。
小説としての面白さは一級品。二転三転する大迫力の物語です。
なので、物語を一つ楽しみたいと仰る方へ、太鼓判。
――ですが、私は本作の、ミステリとしての面白さを高く評価したい。
こちらの作品、「解ける」のです。
もちろんミステリの楽しみ方に作法など在りはしないのですが、是非とも、想像力の翼を解放し、目を皿のようにさせて真実にたどり着いて欲しい。
最終話。ぺージをめくる前。あなたの導き出した解答。
『本当にそれで良いのですか?』
真犯人を、あなたは見つけ出すことが出来るか。
全国の名探偵諸君に、是非とも挑んでいただきたい! 名作!
ミステリーではなく、ミステロイド。
ミステリーもどき、と言った意味合いで名付けられた題名には、さまざまな意味が込められています。
ともすればアンフェアに取られがちな、次々とエスカレートして行く人物たちの真実。中編だからこそ間延びせず、矢継ぎ早にそれらの設定を上書きし、畳み掛けることで、不思議と説得力が生まれています。
荒唐無稽にも取られかねない「設定のどんでん返し」に注目しながら読んでもらいたいですね。
あえて逸脱させつつ、それでいて犯罪の状況に整合性を持たせる筆力に舌を巻きました。
華やかな女子高生たちの愛憎、アリバイ崩し、証拠品の配置など、全て計算されて書かれていることが判ります。
綺麗にまとまった普通のお話なら、掃いて捨てるほどあります……が、そんなものに何の意味があるでしょうか?
そんな「凡作」は、埋もれてしまいます。公募に出しても「ありきたり」で済まされるでしょうね。
だから、新解釈が必要になる。
この小説のような、ちょっとズレた要素が欠かせません。
自由に書けるウェブだからこそ、実験的な意欲作を生み出せると思うんです。
どんな内容だろうと、作中に説明があり、その範囲内で真相が類推できるのであれば、それはフェアなんです。
こうした才能が、ミステリーの新たな地平を切り開く次世代の原動力になるのだと確信します。
かつて麻耶雄嵩や京極夏彦がそうであったように。