織田信長の偽典にして外典にして、真伝。

戦国時代に現代人が転移し、歴史改変を目指して大活躍!!
……と一言で表してしまうと安っぽくなってしまうので避けますが(言っちゃったけど)、主人公の苦心と苦悩が耐えないハードな読み応えになっています。

決して現代知識でチートなんかしません。転移したのはヤンキー女子高生で、戦国時代では人並み以上の腕力を身に付けていますが、それだけです。等身大の女の子です。
織田信長に取り入って立身出世を目指しつつ、信長といつしか恋が芽生え、本能寺の変で死ぬ運命を改変しようと奮闘します。

また、一緒に転移した主人公の姉も、なかなかの曲者です。
信長の正室に迎えられる「濃姫」になりすまし、政略と策略の渦中に巻き込まれつつも、彼女は明智光秀と恋仲になり、光秀を生かすべく歴史改変に勤しむわけです。

読者は学校の授業で信長と光秀の結末を知っているからこそ、手に汗を握ることが出来ます。
いかにして悲劇を回避するのか。信長と光秀の軋轢(なぜ対立したのか)は史実でも謎が多いのですが、本作ではそこにきちんとスポットを当て、両雄の確執を見事に書ききっていました。

主人公姉妹を歴史の空白にうまく嵌め込んで、説得力のある物語に昇華しています。
そこに一番感心させられました。お見事です。

……無論、ファンタジーとはいえ賛否の分かれる箇所もあるとは思います。
例えばタイムスリップの恩恵で人並み外れた膂力と肉体を手に入れたものの、歴戦の武将と渡り合う主人公はさすがに強すぎないか?
まぁそれを言ったらそもそもタイムスリップ自体が無理ある展開なわけで、そこは「そういう設定」として飲み込んで問題ないと僕は判断しました。

本能寺の変を迎えるまでの周到な人間模様の変遷が面白く、そして本能寺の変が起きたあとの、信長たちの結末も衝撃的です。
現代と戦国時代を結び付ける意外なオチにも注目です。大変興味深く拝読しました。

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