百の魔剣が導くその先に

旧王国時代、と呼ばれる古の時代に鋳られし百の魔剣――百魔剣。
恐ろしい力を持つその遺物に導かれるように少年少女が出会い、立ち向かっていくという本作。
細部まで作りこまれた世界観はもちろん、主要人物であるシホ、リディア、クラウスの解像度が非常に高く、読み進めていくうちに本当にその場にいるような気分になったことは一度や二度ではない。
ちなみに私は昼休みを利用して読んでは、仕事に戻れず後悔したことが何度もあるので、このレビューを目にしてこれから読みにいく方は注意されたし。
また、戦闘描写における苛烈さと戦いの合間の何気ない平和なワンシーンの書き分けが素晴らしいと感じる。動と静という二つのテンポが、そこで生まれる登場人物達のドラマに厚みを持たせているのは間違いないのではないだろうか。
長い物語の中で明かされていく過去や秘めた葛藤、そしてそれを乗り越えて強くなっていく様は王道でありながら、やはり胸をうつ。
特に第四章で物語が転へと入り、五章から終章の結へと至るスピード感と迫力は圧巻である。

長い戦いに決着がついた後に、3人それぞれが前を向いて進んで行くエンディングは読みながら嬉しさと、「まだ彼らの戦いは終らないのだな」という一片の切なさも感じる。
それでも、きっと彼らは暗闇で己が進むべき道を照らす光を見つけ、今後も進んで行くのだろう。
個人的に好きなキャラを挙げるなら………と、ここまで書いて、3人の誰もに優劣をつけれないくらい好きになっている自分に気づいたところで、このレビューを締めとしたい。

このレビューで興味を持たれた方は、是非とも「百」の魔剣に導かれし少年少女達の物語を紐解いてほしい。

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