第8話 情熱のペース配分が間違っている

「今回は作品への情熱についてだ」


僕の頼れる脳内親友イマジナリーフレンドフェルナンド・木村さんが妙に小難しいことを言い始めたのは、すっかり初夏のにほいが漂う休日の午後だった。


「なにそれ?今日も長いの?」


僕は最近この創作論が★100を突破してしまい、モチベーションが少しずつなくなり始めていた。


「おいアミーゴ。お前最近なんかたるんでないか?」


「え?そうかな?」


「アレか?もう良いわ的な感じか?もう100超えたから結構です的な感じか?」


「いや、べ別にそうは言ってないけど‥‥」


「バーンナッコウ!!」


「おっと」


「な!?」


「毎回そう易々と殴られてたまるかよ」


「その動き‥‥トキ!」


「いや普通に避けたんだよ」


「やるなアミーゴ。さすが伝承者だ」


「いやオッさんだよ。普通の」


「まあいいや。だけど正直に言えよ。この創作論も★100を超えて、実際なんか気が抜けているんじゃないか」


「まあね。実際そうかもしれないな」


「まあ仕方ないよな。いくらこのエッセイはカウントに入れるなとは言ったものの嬉しかったからな」


「でしょ?もう良いんじゃない木村さん。この辺でさ」


「なにがだ?」


「だからさ、ボチボチネタ切れだし。このエッセイ終わらせちゃって‥‥」


「バーン!バーン!バーンナッコウ!!」


「げっっつ!」


「くぉのうビチグソがああああ」


「ぷえる!!」


「謝らんかい!せっかく110も★をつけてくれた人々に!謝らんかい!」


「な、なんで!?」


「いいか。この星々はな。お前の実力で貰えたんじゃねえ。これは言わば、★のつかないユーザー達の執念の塊だ」


「はえ」


「こいつはな。『俺もそう思う。お互い頑張っていこうぜ!』とか『私もどこかで感じていた。改めて、するべきことが分かった』という意味での★だ。こんな感情論だけの創作論。励み以外には何にもならねえ」


「だけどやりとりが面白いっていう人も‥‥」


「それは俺のおかげだろ」


「え‥‥」


「‥‥」


「‥‥」





「アミーゴよ。今回お前に教えたかったことはまさに今お前に起きていることだ」


「え?どういうこと?」


「お前、作品に飽きやすいんだよ」


「ギック!」


「情熱を注ぐ配分が間違ってるんだ。せっかくこれだけ色々な人が読んでくれてんのにまーたよく分からん現代ドラマ書いてる」


「そうだね」


「PVが2しかついてない物よりも、こっちに少し時間をさけ。もしくは何かを読め。そして考えろ。どうやったら面白い物語が書けるか考えろ」


「まあほら。あれは息抜きだから‥‥」


「またエタるのか」


「え?」


「またそうやってエタるのかよ。アミーゴ」


「そんな!エタるなんて‥‥僕はただ‥」


「いいぜ。俺は別に。木村さんはお前の脳内親友だからな。お前の都合よくどうにでも解釈してやる。だけどこの作品を読んでくれた人はどう思う。フォロワーだけで50人。お前はいつから50人もの人間をないがしろに出来るほどお偉い先生になった?あん?言ってみろ」


「‥僕は‥」


「いいか。幾人もの偉人たちが口を揃えて言っている言葉を今一度お前に言ってやる。『継続は力だ』」


「分かってるよ」


「分かってるならどうして背を向ける。確かにこれは当たり前のことでありながら同時にかなり難しいことでもある」


「うん」


「だけどそれを実行して初めて自分の目標に手が届くんじゃないのか。今日出来る当たり前の努力を惜しまないでやれよ」


「分かって‥‥いるよ」


「ならやれ。いいか。エタるってのはな。読者に対してはもちろんだが、作品にとっても一番やっちゃいけないことだ」


「作品に?」


「そうだ。作品はな。言ってみればお前の子供だ。お前が産み出した。お前はその子供を最後まで面倒見ずに放棄してるのも同じなんだぞ。もしもこれが人間だったら、お前はこんな親をどう思う?」


「失格だね」


「だろうよ」


「分かった。じゃあ今からエタってる連載終わらせてくる」


「違う!バーンナッコウ!」


「ぷな!!」


「そうじゃないって言ってんだろ!いいか、子供だぞ!お前もし自分に子供がいたらそんな風に無理矢理終わりにさせるのか!?飽きたからって。思い通りにいかないからって。無理矢理完結させるのか!鬼畜!この鬼畜!」


「ち、違うよ!ただエタるのがよくないっていうか、だったらいっそ終わらせた方が」


「だから鬼畜じゃねえか!鬼父!」


「えっ‥‥」


「うん。えーと。とにかくそういうことが言いたいんじゃねえんだよ。いいか。エタるのはよくない。だけどな。だからって無理やり終わらせることも、決していい事だとは思えないぞ」


「だけど、エタるよりはマシでしょ?」


「マシってのは決して前向きな言葉じゃねえ。そんなのはただの言い訳だ。確かに完結することを目標にすべきだ。だからってなんでもいいからとにかく終わらせるみたいな風潮は望ましくない。作品への愛情を感じないぜ」


「まあねえ」


「現実問題として、長期間同じ作品に向き合っていくのは生易しいことじゃねえ。しかも変わらないモチベーションで取り組んでいくなんて。だけどそれを為してこそ作家だろ。逆にそれが出来ずにプロ目指してますって方が驚きだよ」


「大御所漫画家でエタってる人いるけどね」


「大御所だからな。いいんだよ」


「狩人狩人、狂戦士。どっちも好きだなあ」


「まあ時々復活してるし。いいだろ」


「そうだね」




「まあ書いてる方も人間だからな。ひとつの処にかけれる愛情の量ってのは決まってるんだよな。だからこそペース配分を考えてくれって話さ。はじめ飛ばして尻すぼみじゃ★なんて絶対伸びないぜ。連載が重なっててもいい。毎日少しずつでいいから。まんべんなくちゃんとした愛情を注いでくれよ」


「分かったよ木村さん。旅行記エッセイも少しずつ書いてみるよ」


「現代ドラマもな」


「うん」


「よおし。そうと決まったら忙しくなるぞ。連載五本だからな。子だくさんじゃねえか」


「うん。頑張るよ」


「うんうん。あ、そーだ。アミーゴ。ちょっと金かしてくんない?」


「珍しいね木村さん。どしたの?」


「うん。キャバクラでまんべんなく女の子達に愛情を注いだ結果、町金からまんべんなく金をつまむことになった」


「う、うん」


「心配すんな。アミーゴにも町金にも毎日少しずつ働いて、ちゃんと返すからさ」


「う、うん分かったよ」


「グラシアス・アミーゴ。いやあ、モテる男は辛いヨ!」


木村さんにまんべんなく愛情を注ぐことと、八方美人は違うと教えてあげたかったけど、それこそ時間の無駄なのでやめておいた。



『理由その8 情熱のペース配分が間違っている』

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