第3話 主人公に魅力と親しみ易さが足りない

脳内親友イマジナリーフレンドのフェルナンド木村さんが珍しく週末に訪ねてきた。




「イェーイ!!シュウマツノパーリィモ、大★SAWA★GI★フーー!」


「あれえ木村さんどしたのめず‥‥うわ臭っ!酒くさっ!!!」


「ヨーヨーヨーヨー★オラ!アミーゴ!元気してっかぁ?アーイ?」


「アーイ?なにそれ?ちょっ‥‥やめ‥‥危ないよ!手をビュンビュン振り回さないでよ」


「ヨー★ヨー★シケた週末送ってるなアミーゴ!こんな時に一人でいるなんて、ライク・ア・聖夜クリスマスパーリィの星飛雄馬!」


「え?」


「まっ!!」


「うわ臭い‥‥なんなのそのテンション?どうしたの?」


「へへへ。今日は久しぶりにハーフ友達の日系メキシコ人、ホセ山室と飲んでたんだ」


「ああそうなんだ。それで上機嫌なわけ」


「おうともよ。懐かしいな。よく二人でヒトんちのポストにウ◯コ入れたっけな!」


「げえ‥‥サイアク‥‥」


「地元じゃウ◯コマフィアっていわれてたんだぜウィー」


※犯罪です




「ところでアミーゴ。週末ぼっちで何やってんだよウィー」


「酔い方がテンプレ過ぎだよ。いやさ。例の『魔王討伐』。読み進めてたら結構ハマってきちゃって。やっぱり面白いんだね」


「そうか。そら良いこった。勉強が面白いのは成長の兆しだララァ。ヒック」


「結構飲んでるね。語尾にガンダムのキャラの名前ついてるよ」


「れんれん飲んれねえよ。ゴック」


「昭和かよ‥‥」


「まあお前さ。ハマったのは良いけど討伐を読み進めていくウチに、更に気が付いたこととかないわけえ?」


「ああ、そうそう。いや本当に凄いよね。有名な作品てのは読んでるだけで目から鱗だよ。あれから本当に少しだけ進んだんだけどさ。面白いね」


「何処がー?うーぃ」


「主人公がカッコいい。切れ者な上に聖職者で回復役でしょ?オマケにかなり強いときてる」


「うんうん」


「顔はそこそこってとこが良いよね。飛び抜けてイケメンじゃないのがまたリアルでさ。つい自分を重ねちゃうっていうかさ」


「そうそうそうなんらよ」


「下心なしに人の尊敬を得てるとこもカッコいいよね。意外と愚直なところもあってさ」


「うんうん」


「魅力的な部分と親近感が沸く部分がそれぞれ半分くらいあるんだよねえ。絶妙なバランスだよ」


「それだーー!!」


「え?」


「らからそれらよ」


「絶妙なバランスってとこ?」


「自分を重ね易いってとこらよ!!バカ!」


「いやそれ一回聞き流してたじゃん」


「うるせえ!いいらろ別に」


「ええ。横暴だな‥‥でも確かにそこは気付くとこだよね。主人公ってさ、魅力と同じくらい親近感が大事なんだね。親近感がある方が物語に入り込み易いっていうかさ」


「れんれんちげえよバカ!」


「え?じゃあ何?」


「『顔はそこそこ』って。お前、自分の顔がそこそこだと思ってんじゃねえだろうな?え?」


「え?うんまあ‥‥」


「超絶怒濤のブサメンだっつーのww」


「ああ。そ」


「そこそこってお前、過大評価し過ぎだっつーのwwマジウケるわ」


「なんかムカつくな今日」


「アレ?怒った?ウヘヘ。メンゴメンゴ。で?親近感と魅力だっけ?どんなとこで感じたの?」


「うん。まあだからさ。プリーストの性格も他のぶっ飛んでるキャラに比べて幾らか常識人だし。なんつうかツッコミ役っていうのかな」


「ほうほう。それで」


「読んでる側が他のキャラの発言や行動に対して『え?それなんか違くね?』と思うところに『なんでやねん』てツッコミを入れてるんだよね。まあごく一般的な目線で物を言ってるんだよ。それが親近感かな」


「ふ〜ん」


「それで一見何も考えてない風に見せて実は色々考えててさ。頭フル回転させてどうやったら物事が上手くいくか考えてるワケなんだよ。博識だけど偉ぶらないし。そういうインテリジェンスな部分も含めて、カッコいいなと思いつつ自分を重ねたりしてさ‥‥」


「ブーッ!ちょっ‥待って!インテリジェンス?お前が?」


「いや‥だから全部じゃなくて‥‥時々『あ、俺でもこうするなきっと』てところがあったってだけで‥‥」


「アミーゴwwアッミーゴw勘弁してよ。中・高と国語以外の成績オール2だったアミーゴがインテリだなんてww」


「いや学校の成績と頭の良さは関係ないでしょ」


「で、でたー!成績悪かった奴はみんなそんなこと言うんだよね〜。じゃあ言うけど中一の時の数学のテストで角度を求めよって問題でさ。『℃』って書いて授業中に『温度は聞いてません』てみんなの前で先生に言われたアミーゴはインテリジェンスとは言えないんじゃないかw」


「‥‥」



※実話です。



「おおっとwメンゴメンゴwいやあ酔ってるんだよぉアミーゴ。怒らないでよぉ」


「もういいよ」


「いやいや待って待って!本当にごめん。もうちゃちゃ入れないから。ね?いや俺だって嬉しいのよ。アミーゴが頑張ってるとさ」


「‥‥」


「さあ。続けて続けて」


「うん。あと主人公だけどね。さりげなく優しい人ってとこも良いよね。回復が使えるっていうのと聖職者っていう設定はここで生きてくるんだけどさ。言葉遣いはやや粗暴で金の為に働いてるって言ってるけど、人助けに回復したり、ちゃんと信仰心もっていたり。なんだかんだ言って村の為に魔物倒す算段をつけたりしてさ。意外とコミュ力高いんだよね。利己的に見えて善人だし」


「ほーん」


「いやしかしさ。こうやって改めて人の作品を読むと、主人公にとって魅力がいかに必要なものかよくわかるよ。それと同じくらい親しみ易さも大事だって痛感した」


「まーなー」


「僕、物語のことばっかり考えて主人公の設定が全然しっかり考察されてなかったよ。前回の設定の話の続きみたくなるけど、主人公の作り込みも本当に大事だね。親しみ易くてカッコいい。王道で簡単そうに見えるけど、実は結構難しい設定だね。主人公を作る時って、どうしてもオリジナリティを出そうとして変な性格にしてたんだけど、逆効果だったんだね」


「そうねそうねー」


「主人公は魅力溢れる部分もありつつ、抜けたところや常識的なとこもちゃんとある。その絶妙なバランスに読者は引き込まれていく。気が付いたら自分を重ねたりしてさ。まるで物語を疑似体験してる気分になる。これが作者の狙いなのかもね。本当によく考えられてる。物語を書くって、実はとても大変なことなんだね」


「そーそーそ‥‥あっ!そうだ!」


「なんかあった!?」


「さっきコミュ力って言ってたので思い出したんだけど」


「うんうん」


「アミーゴ、昔初めてネトゲやった時にコミュニケーションのとり方がイマイチ解らなくて通りすがりの人にすげえ丁寧な長文で話しかけたら『うわ何こいつwきめえw』ってログアウトされてたよねww」


「‥‥」


「コミュ力高いww」


「ハリケンッッパー!!」


「ぶべら!」


「いい加減にしろよ木村さん!真面目に聞く気ないなら帰ってくれよ!僕は本当に星を100個とりたいんだ!」


「ア、アミーゴ‥‥」


「もう木村さんの助けがなくても関係ない!討伐を最後まで研究して、絶対星100個とってやる!その時は僕に、謝ってくれよな!」


「‥‥」


「なんとか言えよ!」


「すまないアミーゴ。俺が悪かった。久しぶりに親友と飲めて舞い上がっていた。すまない。本当に」


「木村さん‥‥」


「俺を殴れ。アミーゴ」


「ええ!?無理だよ!」


「良いから殴れ。俺はクソ野郎だ。どうしても無理ならピニャータ式で殴れ」


「ピニャータ?」


「ホセ山室の故郷メキシコじゃ祭りの時にピニャータってくす玉人形をバットで叩いて、中に入ってるお菓子やおもちゃを子供がゲットするんだ」


「う、うん」


「俺はお菓子やおもちゃは持っていないが、お前が星100個とれるアドバイスなら少しくらいは吐き出せると思うんだ」


「で、でも‥‥」


「やってくれ!頼む!さあ一思いにこのプラスチックバットで!大丈夫、痛くはない!さあ!」


「じゃ‥‥じゃあ‥‥」


「バッチコーイ!」


「せい!」


木村さんのみぞおちにバットがヒットした。


「ぶえっ」


「木村さん!」


「エラロロロエロロロロオロエオエレオロロロロエロエラロロロロロロロオロエ」


おもちゃもお菓子も、ましてや良いアドバイスも出なかった。


なんだこれ。


心からそう思った。




理由その3


『主人公に魅力と親しみ易さが足りない』

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