第5話 読者の目線に立てていない

「木村さん!!大ニュースだ!!」


脳内親友イマジナリーフレンドの日系スペイン人、フェルナンド・木村さんに伝えたいことがあって僕は木村さんの家を訪ねた。


え?木村さんの家はどこかって?


そりゃあキミ、僕のあたまの中さ。




「どぅしたんどぅい。親友ミ・アミーゴ


木村さんは畳に寝そべってテレビを観ていた。オマケにケツをかいている。こちらを振り向こうともしない。


「木村さん、堕落してるね」


「いや、通常営業だ」


「‥‥」


「無職で営業とはこれいかに」


「‥‥」


「‥‥」




「ところで今日はどうした」


「あっそうだ!大ニュースなんだよ!」


「バーンナッコウ!」


「でぶしッ!」


「浮かれてるんじゃねえ!!」


「イテテテ‥‥なんで、なんで殴るのさ、浮かれてるって」


「大方お前のことだから、このエッセイもどきが創作論ランキングの週間と月間で4位になっていたことに浮かれてんだろ。ケッ、しゃらくせえ」


「なんだよ木村さん。知ってるのか。木村さんはなんでも知ってるな」


「なんでもは知らねえよ。お前のことだけさ」


「なにそれストーカーじゃん」


「イマジナリーフレンドだよ」




「で?それだけか?」


「そうだね。まあこの作品、結構ウケも良いし。今4話掲載して★50個獲得したから、単純計算すると8話にはもう★100個くらいいくんじゃない?そしたら目標、達成で良いよね?」


「お前、それ本気で言ってる?」


「ええモチよ」


「このクソサナダムシやろおおおお!!」


「ひぃぃ‥‥あれ?」


「おい、何故いま俺が殴らなかったか分かるかアミーゴ」


「分からないけど‥‥理由があるの?」


「バーンナッコウ!!」


「デュクシッ!!」


「理由は‥‥殴るのを忘れただけだ」


「‥‥」


「いいか、俺はな。この作品で★100個を目指せと言った覚えはない。むしろこれで獲ってもダメだ。意味がない」


「なんで?立派に僕の作品なんだから良いじゃん」


「ダメだ。これは作品への面白さについた★じゃない。これは思うように★が獲れないことへの共感でついたものなんだよ」


「うぐっ‥‥」


「ちゃんと練った物語で★100個を獲れ。そのつもりで物語を書け。共感ではなく、純粋な面白さで獲得しろ。そうでないとお前の成長にはならん。アマチュア作家としてのお前のな」


「‥‥うーん」


「いいな。アミーゴ」


「分かったよ」




「よし。ここに来たついでに大事なことを教えてやろう」


「なあに?」


「まあここまでお前には基本中の基本なことを教えてきたな」


「そうだね。まあいわゆる『言われなくても大体分かっていること』のが多かったかな?」


「まあ、分かっていない奴は大概そういうことを言うんだ。そもそも、その当たり前のことすら出来ていないからダメなんだよ」


「うぐぐ」


「で、だ。一番大切なことを今日は教えてやる。★を多く獲得する為に一番大切なこと。かつ一番当たり前のことだ」


「なに?」


「それはな『読者の目線になって考えてみること』だ」


「ああ、それね」


「バッキャロウ!テメエ!それが一番出来てねえんだよ!」


「ええ!?そんなことないよ??」


「嘘こけこのタコスケ野郎!お前なんて全然読む人間のこと考えてないだろ」


「なんで、そんな‥‥」


「じゃあ言うけど。お前の60話ある長編ファンタジーな。なんで各話のタイトルの9割が英語表記なんだよ」


「あれは!ちゃんと意味あるんだよ!アレは全部実在する曲名なんだよ!」


「うん。意味がわからねえ」


「なんで!?音楽にちなんだ能力を使って戦うんだよ!?ちょっとした隠し要素だよ!?」


「要らねえよそんなの。だいたいその能力設定さほど重要じゃないだろ。タイトルが内容に沿ってねえよ。あと、カクヨムの方はまだ良いけど、なろうの方は話数すら書いてないから各話完結の短編集みたくなってるじゃねえか。章も別れてないし。読ませる気あんのかよ」


「カクヨムでは章別にしたよ」


「全部初めからそうしろ。ていうか。オーソドックスに『なになに編その1』とかのタイトルのが分かり易いし、そうでないならせめて内容に沿ったタイトルにしろ」


「中には沿ってるやつもあるよ!歌詞の内容と小説の内容がリンクしてるの!」


「あれじゃ分かりづらい」


「ぐっ‥‥」


「オサレ少年マンガじゃねえんだからもう少し分かり易いタイトルをつけろ。いちいちオサレぶるな。内容は大してオサレじゃねえんだから。中途半端なんだよ」


「そう‥‥だね‥‥」


「お前はどうだか知らないけど、英語表記のタイトルはここらじゃ不人気だ。ここは日本だぞ。せめてカタカナにしろ。バイリンガルでもないのにわざわざ英語使うな。人に物を伝えたいなら自分が一番得意とする言語で伝えろ。出来もしない英語を使うな。高校生のバンドじゃないんだから」


「泣けてきた」


「いいか。作品に対しては常に客観性を持て。自分が読者だったら何が面白いと思うかを考えろ。読んでいて苦にならない内容にしろ。貴重な時間を使って読むんだ。例え暇つぶしだったとしても時間は有限なんだ。電車で通勤通学する時間をクソみたいな自己満足に好き好んで費やす奴がいるか?いないだろ。だったら、自分がそういう隙間の時間に読んで面白いと思いそうなものを考えろ」


「はい」


「まず作品の題名で興味を持つ。次があらすじ。その次にレビューがあればレビュー。そして1話目のタイトル。こういう順番で読者はお前の文章にたどり着く。ここへ来るまでに一つでも興味を削ぐようなことがあればすぐにブラウザバックだ。別のとこへ行っちまう」


「考えてみると、結構長い道のりだね」


「そうだ。だからこそ、なるべくシンプルかつ面白そうな内容で基本情報を提示しておく必要がある。何度も言うが分かり易さは大切だ」


「耳にタコだよ」


「マーシーみてえなこと言ってねえでちゃんと反芻しろ」


「分かり易さは大切。はい」


「そうだ。長い割にスベってる作品名や、造語だらけで意味不明のあらすじ、そして何故か英語を使ってる本編にほぼ関係ない各話タイトルはやめろ。悪いことは言わない。そういうのは卓越したセンスの奴がやるべきだ。凡才は技術と分かり易さで勝負しろ。いいな」


「了解です」


「作品名、あらすじ、レビュー、そしてタイトルと。考えてもみろ、この長い道のりでお前の作品はその道中全てに罠があったり入り組んでて道すじが分かり辛かったりする。変態以外にそんな物語の世界に来るやつはいない」


「歩きにくい道はあえて選ばない。仕事でもないのにね」


「そう。だからお前の作品を仕事で少しでも読まなきゃいけない人たちは大変だよ。百歩譲って面白くなくてもいいからまともな作品を読ませろって思ってるだろうな」


「そうなの?」


「そうだろ?」


そうなんですか?選考の方、下読みの方。




「仮に★をお金だと考えてみろ。小説は商品だ。その店で売ってるものが未完成品や失敗作だとして、それにお金を払う奴がいるか?」


「いない‥‥ね」


「下手したらクレームが出ることだってある。まあ辛辣なレビューはある意味クレームみたいなもんだな。せっかく時間を使って読んだのに内容が酷かったら腹も立つだろ。無料タダとは言え時間を使ったんだ」


「時は金なり、ってことね」


「そういうことだ。だが一番怖いのはそのクレームすら来ないこと。一度読んでつまらなかった作者の作品はよっぽどのことがなきゃ二度と読まない。知らない間に読者を一人失ってるんだ。出す作品には気をつけるべきだろ?」


「無料でアマチュアの作品でも、人前に出すにはそれなりの心構えが必要だってことだね」


「そういうことだ。まあ自己満足でやってるってんなら別に良いけどな。けど他人から評価をもらいたいならそれなりに努力がいる。そして、読者の目線になって色々と考えるのは特に重要なことだ」


「うん。そうだね。肝に銘じる」


「口だけじゃなくてちゃんと行動に移せよ?口だけになるのは一番よくないからな」


「もちろんさ」


「うむ。それなら良かった。さて、そろそろ時間だな」


「うん。僕もう帰るね」


「いや、そうじゃない。ここらで俺の役目は終わりだ」


「え!?どういうこと!?木村さん?!」


「いいかアミーゴ。よく聞くんだ。小説で★100個を獲るのは決して簡単じゃない。読者を舐めるな。自分を押し付けるな。お前はプロじゃない。だからこそ、人も自分も、両サイドの目線から見て面白いと思える作品を書け。そうじゃなきゃそんなアイディア今すぐゴミ箱に捨てちまえ」


「なんか‥‥木村さん、最後みたいな言い方‥‥」


「そうだ。今日はこれまでの総括だ。基本中の基本の総括だ。いいな。ごく当たり前のことが出来て、初めて一人前なんだ。忘れるな」


「木村さん!!待って!!行かないで!!」


「おアディオスれだ、親友アミーゴ


「木村さああああん」


木村さん姿が薄くなり、彼はまるで霧のように消えてしまった。後には胸毛一本残っていなかった。


「うう‥‥木村さん‥‥ありがとう。僕、頑張るよ!絶対、絶対に面白い小説書いてみるよ!」


再び襖バーン!木村さんドーン!!


「よく言ったぜぃいぃぃ!!アミーゴォ!!」


「うわ木村さん!?なんで!?消えたんじゃ!」


「うん。役目は終わったよ。木村ファーストのね」


「ファースト?」


「そうだ。これからは俺、ゼータ・フェルナンド木村の出番だ」


「ゼータ?ファーストの次なのに?」


「そうだ。カッコいいだろ」


「‥‥」


「ゼータ木村は変形できるぞ!ほれ!」


そう言って木村さんはズボンを脱いでパンイチになった。


「軽量タイプに変形だ!ぶぃーん!」


「‥‥」


「次からは技術の基本編!始まるよ!」


僕は段々コイツに教わっている自分が情けなくなってきていた。


「ぶぃ〜ん」


『理由 5 読者の目線に立てていない』


基本中の基本編 完

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