あるきっかけで出会った、少女と銀狐の子。
少女が、狐を罠から救った。
その出会いは、わずかな時間のことだったけれど——
救った少女と救われた狐は、それぞれに、ただひたすらに、目の前の日々を生きる。
彼らの前に立ち現れるのは、この上なく苦い現実。
そして、自然の中で強く育った雄狐と、ある揺るがぬ決意を胸に抱いた少女は、再び出会う。
ともすれば一瞬で消えるかもしれない「命」を、強烈に燃やしながら。
生きることは、苦しみ。
その苦しみの中から、手探りで光を探すこと。
何としてでも、その光を手繰り寄せること。
読み終えた後、そんな強烈な余韻がいつまでも胸に残る、ずっしりと深い重みのある物語です。
読んで良かったと、心から思える物語です。童話的な物語の中に、家族とは? 生きるとは? という命題が上手く組み込まれていて、心に響きます。この作品の中軸として狐と少女が出てきます。少女が家族を失う一方で、狐は家族を得ます。こうした対比構造も巧く取り入れられていて、よく練られた作品であると分かります。それなのに全く押し付けがましくなく、スラスラと読むことが出来ました。作者様の文章力の賜物だと思います。
罠や銃、野生動物の考証も優れていて、物語に現実味を与えています。メッセージ性も確立していて、ダイレクトに心に刺さります。
この物語に出会えたことを感謝します。
是非、是非、ご一読ください。
自然に生きる銀ぎつねと、父親を亡くし新しい父親に暴力を受けている少女の視点が、交互に展開していきます。
一人と一匹の接点は、罠にかかったきつねを、少女が助けた、というところ。
しかし、そこからお互いが仲良くなって……というようなお話ではなく、一人と一匹はそれぞれの生を歩んでいきます。
一人と一匹のそれぞれの生きるさまを興味深く読み進めつつ、お互いまたいつか出会うのだろうかと思いながら、惹かれていきました。
そして終盤、少女は、読んでいて胸の苦しくなるような葛藤をします。
この盛り上がりは個人的に大好きで、胸がぎゅうぅっとなりました。
そして少女は――
銀ぎつねは――
ぜひ、一人と一匹をあなたの目で見守ってみてください。