時が流れ人や村が姿を変えても、この絆は変わらない。

まずこれだけは言いたいです。
皆さま、読む前に必ずタオルをご用意くださいね。
綿の薄いハンカチではキャパシティを越えてしまいますので、必ず厚手のタオル地のもので!

さて、こちらのお話はひいおばあちゃんと孫、そしてひ孫の三人が、かつてひいおばあちゃんが疎開していた花咲村の現在の姿を見に行くところから始まります。
目的地に着くまでの間、おばあちゃんはこれまで何度となく語ってきた、花咲村で子供の頃に出会ったもっちんという男の子とみかんという犬の話を始めます。
ひとしきり話し終えて、昔とは様相を変えた花咲の地を訪れた三人。
そこで起きた出来事とは──。

戦時中、都会では空襲で多くの命が奪われ、殺伐とした空気に満ちていたと思われますが、ひいおばあちゃんのかえで達が疎開していた花咲村は比較的のどかで、人々も静かに穏やかに暮らしていました。
素朴で優しい子供たちがのびのびと遊ぶ姿に、きっともっちんも心惹かれたのだと思います。
心で繋がっていたかえで達ともっちんの絆が温かくて、その絆がきっと次代の子供たちにも引き継がれていくであろうことに大変感動いたしました。

猟奇ストを自認される作者様ですが、物語の発想力、構成力、そして端正な筆致は、このような童話という方面でも遺憾無く発揮されており、素晴らしいの一言しかありません。

心が洗われる一作を、ぜひ。

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