物語の始まりは、戦争経験者の大おばあちゃんと、その孫たちが、かつての疎開先を訪ねるところからはじまります。どうやら再開発が行われたようです。どんな思い出深い風景もいつかは変化していくということでしょう。
なら、再開発される前は、どんな姿だったんでしょうか?
そこで視点の時間軸は遡って近代となり、大おばあちゃんが子供だったころになります。
疎開先は田舎ですので、神秘的な力が残っています。タイトルにある、みかん、もっちん、は名前です。田舎に住んでいる神秘的な男の子と犬の名前になります。具体的に語るとネタバレになるので、レビューを読んだかたは名前だと覚えておくだけで大丈夫です。
とにかくみかんともっちんが、疎開先に起きる大事件に深く関わることになり、大おばあちゃんは不思議な彼らと深く交流していくことになります。
疎開先に起きた大事件とはなんなのか? 現代の大おばあちゃんはかつての疎開先が再開発されたことにどんな感情を抱いたのか? レビューを読んだあなたも一緒に体験しましょう。
本作は、大おばあちゃん(人見かえで)が過去を振り返るところから始まるのですが、第一話から落涙を予期させるような話の流れがあり、居住まいを正す自分がいました。
大おじいちゃんである坂巻慎太との出会い。
隣り合わせの戦火の中、思う存分、生を楽しむ子供達。
そして「もっちん」と「みかん」と出会った彼女は、やがて村を襲う凄まじい豪雨に見舞われることになるが……。
時代考証も丁寧で、昭和19年の情景が目に浮かびます。
童話と聞くと子供のために作られた話であり、大人が読むには耐え難いイメージがあるが、本作は大人に向けた童話、あるいは昔話という印象を受けました。
現代と過去を行き来する物語はやがて一つに交わり、必ず読者に大きな感動をもたらしてくれるでしょう。お手元にハンカチをご用意して読むことをおすすめします。
皆さまも是非本作に触れて、現代の傑作童話を堪能してはどうでしょうか(⌒∇⌒)
とても 澄んで、キレイな空気を感じる事が出来、そして 心が胸が熱くなる童話です。
正直なところ、「みかん」の文字に 惹かれて、読ませて頂いたのですが。
ただ 懐かしいだけでなく、時代の流れも 受け入れた、涙の後 スッキリする、本当に素敵な作品です。
個人的には、PNを みかん とさせて頂いており、大分 自分が、みかん である事に 馴染んできているので、作中 何度も「みかん」と呼ばれてw しかも みかん が かわゆくて、お利口で、カッコイイの! 私の事じゃないのに、度々 ドキドキしたり、嬉しかったり、更に 泣いてと、忙しかったです。
私も もっちん と みかん に会える(見える)心でありたいなと思います。美しい物語を ありがとうございます。
ありがとうございました。
最初にお礼を言っちゃいます。
こんなにも心温まる物語を、子供たちの絆を、友情を、ぬくもりを与えていただけて、胸がいっぱいです。
レトロな田舎町での、自然災害から村人たちを救うお話。
古びた神社に住む幼い神様が、人間たちの前に現れて、避難誘導をしてくれるのですが、大人たちは全く信じてくれず……。
という、概要だけ見ると定番のおとぎ話に思えるものの、とんでもない。
早く避難しないと村人が全滅してしまう危機と、神様の姿が見える子供たちが必死に大人を説得する様子が実にスリリングです。
こうした駆け引きは王道中の王道だからこそ、本作品ではもう一つ、神様のお供であるお犬様の存在が光ります。
動物って可愛いですよね。癒しですよね。創作では何かの象徴だったり、示唆的な役割を果たしたりしてくれるんですよね。
犬が子供たちを先導して、避難経路を示してくれるんです。
大人には見えないけど、それを元に子供たちが大人を説得するんです。
村を救った神様「もっちん」と、そのお供の犬「みかん」。
あれから何十年も経ち、年老いたかつての子供たちが見たものは……。
奇をてらわない直球勝負の結末は、とても素敵です。
素直な、純粋な、感動の涙を流すことが出来ました。
もう一度言っておこう。ありがとうございました。
誰もが小さい頃に出会っている「者」があります。
ただ、大人になるにつれその存在を感じ取ることができなくなり、「出会った」という事実さえ脳裏から消えていきます。
その出来事を既存の論理に当てはめ、結果として「夢」とか「記憶違い」で整理してしまう。そして、いつしか「他愛もない出来事」として記憶から消えて行くためです――それはとても寂しいこと。自分にとっても「彼」にとっても。
では、その事実が消えないようにするにはどうすればいいのでしょう?――簡単です。いつまでも「あの頃」の気持ちを忘れなければいいのです。自然が醸し出す、美しい風景に感動し、打算的ではなく純粋な友だちの大切さを実感した、あの頃の気持ち。
100%あの頃のままというのは無理がありますが、せめて20%ぐらいは持ち続けたいものです。そうすれば、きっともう一度会えます――「彼」に。
皆さんもぜひ遠い昔にタイムスリップして、優しさに包まれてみてください。えっ? どうするのかって?? 簡単です。このお話に目を通せばOKです。
まずこれだけは言いたいです。
皆さま、読む前に必ずタオルをご用意くださいね。
綿の薄いハンカチではキャパシティを越えてしまいますので、必ず厚手のタオル地のもので!
さて、こちらのお話はひいおばあちゃんと孫、そしてひ孫の三人が、かつてひいおばあちゃんが疎開していた花咲村の現在の姿を見に行くところから始まります。
目的地に着くまでの間、おばあちゃんはこれまで何度となく語ってきた、花咲村で子供の頃に出会ったもっちんという男の子とみかんという犬の話を始めます。
ひとしきり話し終えて、昔とは様相を変えた花咲の地を訪れた三人。
そこで起きた出来事とは──。
戦時中、都会では空襲で多くの命が奪われ、殺伐とした空気に満ちていたと思われますが、ひいおばあちゃんのかえで達が疎開していた花咲村は比較的のどかで、人々も静かに穏やかに暮らしていました。
素朴で優しい子供たちがのびのびと遊ぶ姿に、きっともっちんも心惹かれたのだと思います。
心で繋がっていたかえで達ともっちんの絆が温かくて、その絆がきっと次代の子供たちにも引き継がれていくであろうことに大変感動いたしました。
猟奇ストを自認される作者様ですが、物語の発想力、構成力、そして端正な筆致は、このような童話という方面でも遺憾無く発揮されており、素晴らしいの一言しかありません。
心が洗われる一作を、ぜひ。
静かに癒され、やがて胸が強く揺さぶられる。涙が溢れ、止められない。
素晴らしい物語です。
戦争末期。主人公が過ごすことになった、疎開先の小さな村。
そこで寄り添いながら健やかに生活する子供達。心癒される懐かしい情景を描きながら、物語は静かに進んでいきます。
そんなある日、彼らが出会う「もっちん」と「みかん」。愛らしいその姿には、思わず微笑みが漏れます。
やがて、村に起こる大きな出来事——
そして、時を経たその場所を再び訪れる主人公を待っていたのは——。
子供が、清らかな心で見る風景。時を経て、体の自由を奪われた主人公が眼にする情景。
その風景が、一つに重なる。
それはまるで真実を言い得ているようで——強く心を揺さぶられます。
思わず涙が溢れます。
短い中にたくさんの思いが凝縮された、ぜひ多くの人に読んでほしい作品です。