とびきり居心地のいいブック・カフェ、夜空の線路を運行中です

大人の男に憧れる「僕」は、物知りなムギさんに相談した。
母や妹を守れるくらい強くなるため旅に出てみたい、と。
ムギさんは、銀河鉄道の喫茶室に夜毎、乗車することを提案した。
ちなみに、ムギさんは、夜になると人の言葉をしゃべる黒猫だ。

夜空を翔けるふしぎな列車のブック・カフェを舞台に、
やさしい言葉で織り成される童話風味のショートショート集。
読書の供、旅の供として、コーヒーやまかないが折々に登場し、
「僕」とムギさんは風変わりで素敵なヒトビトと出会っていく。

小学生のころに好きだった童話や児童文学を思い出した。
日常のワンシーンを切り取って、すこしのふしぎで味付けする、
そんな物語が大好きで、気に入った作品を繰り返し読んでいた。
あのあたたかくてわくわくする空気を、この作品も持っている。

1年生のころは、立原えりか、あまんきみこ、馬場のぼる。
学年が上がると、王さまの寺村輝夫、かぎばあさんの手島悠介、
『霧のむこうのふしぎな町』の柏葉幸子、ルドルフの斎藤洋、
延々と止まらなくなってしまうからこのあたりでやめておこう。

やさしい言葉とふしぎとユーモアがあんなに好きだったのに、
いつの間にか、私の吐き出す言葉は尖って鋭いものばかりだ。
たまに「僕」とムギさんの会話のような柔らかい空気に触れて
疲れを癒やしたり、刀を収めたり、そっと笑ったりしたくなる。

どの話やキャラクターが特に好きと選んで語ることは苦手で、
ネタバレも避けたいし、曖昧な感想になってしまうけれど、
夜空を走る喫茶店の雰囲気が丸ごと全部、すごく好きだ。
1話1話楽しみながら、「僕」の気付きや小さな成長を見守った。

ふぅわり楽しいふしぎなお話が好きならば、
口達者で少し世話焼きな黒猫が好きならば、
本がたくさん棚に並ぶ喫茶店が好きならば、
「僕」と一緒に家の屋根から抜け出して、夜空を旅しよう。

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