髪と一緒に思い出を切る。求めても彫り出しても、手に入らないから。

ありふれた失恋の風景なんだと思う。
男と女ではないから異質な、とは言えない。
異性愛とは違う部分も無論、2人の間にはあっただろう。
でも、彼に髪を切らせる感情は、ごく普通の苦しさと切なさだ。

唐突に別れを告げられて失恋しつつも、まだ会えるはずと、
後ろ暗くて狡い甘えを抱いてしまう「俺」の葛藤が、
短い中に凝縮されて、美しすぎない生身の言葉で描き出される。
失恋すれば、誰だって、どんな恋だって、等しく痛いんだ。

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