その気持ちの正体が恋であることに気づかなかったら
- ★★★ Excellent!!!
10歳になったら性別を選ばなければならないという現代ファンタジー風味の世界観が舞台のラブストーリーです。
前編と後編に分かれていて、前編では「仲良し」の二人が二人とも女の子になった時のエピソードが、後編では二人が高校生になった時のアヤ(とあえてそうしておきます)の一人語りが描かれています。
「ずっと一緒にいたい」。
女子と男子に分かれてしまったら一緒にいられなくなってしまう……小学生ならではの可愛らしい発想ですね。
高校生という、大人にだいぶ近づいた段階でようやく、アヤはその気持ちの正体が恋であることに気づきます。
この世界ではきっと同じミスをする子がたくさんいるのでしょう。明示されていませんが、この世界では性別の選択は不可逆的なもののようなので、どれだけ選び直したいと思ってももう取り返しがつかないのでしょう。
でも、アヤが女にしなければよかったと思うのは、ユキが男を好きになるタイプだったから。アヤは女であることそのものを否定しているわけではないんです。
そこにちょっとした優しさを感じました。
この物語はけして悲しいだけの話ではありません。
アヤがこれ以上後悔しなくても済むようなパートナーが現れてくれるといいのですが……。