逃れたくても逃れられない運命を、一人の少女が断ち切ってくれた

心が晴れ渡ってゆくのを感じさせてくれる。そんな現代ファンタジーでした。
いわくありげな鏡を巡る人と人、それと一匹。
彼らはそれぞれの思いを胸に鏡と関わって行きます。(約一名はそんな大層な思惑もなく関わっていますが(笑))

学園ドラマ主体のあっけらかんと明るく楽しい物語と思いきや、鏡の謎へと迫るにつれ様相が変わり、本格的なミステリーへと豹変を遂げました。最初からその重さを示唆されていたなら、とてもではありませんが短期間で読める文字数ではなかったのですが、導入から転機、変貌を経てラストに至るまでの構成が見事で、あれよあれよと言う間に読み進めてしまいます。

時雨と時雨とシグレ、林と鈴とリン。
現在と過去、そして異空とそこで出会う人達を巻き込んで展開する冒険活劇。
幾重にも絡まり続ける糸と人の思惑。
謎が解けてゆく時のスピード感と、その後に現れる新たな謎。

どれもこれも読者を魅了して止まないパーツ揃いで、気づいたときにはどっぷりと感情移入をしてしまっています。

こんな物語が読みたかったのだと、読後改めて思いました。

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