死の香りがする、硬質な幻想譚


「わたし」ことレネは、過酷な労働環境で肺を病んだ煉瓦工場の労働者。彼はある日、アパートメントの手摺にジャコウアゲハの蛹を見つけ、『エマ』と名付けて愛で始める。
病に命を蝕まれる中、蛹はある女性の姿に重なっていく……

現実と妄想が混じり合う幻想小説。表現力豊かで、濡れた革靴の冷たさや咳き込む主人公の苦痛が直に伝わってきそうです。
読む人を選びそうな世界観ですが、どこか不気味で、そして儚く美しい文章や雰囲気が非常に好みでした。