出落ち作品ではありません。

2017年12月10日。近所の書店へ行くと、ロッキンさんの『限界集落・オブ・ザ・デッド』と僕の『勇者、辞めます』が平積みになって並んでいました。
第二回コンテストの同期、しかも発売日が同じ組としてこれは読まねばならぬと思い、書籍版を読み、WEB版を読み、番外編を読み、今このレビューを書いています。

あまりに力強いタイトル、そして『ジジババが強い』という前情報から、最初に想像していたのはもっとギャグ寄りの、圧倒的パワーでゾンビ(=留人)を粉砕していくような話でした。
しかし蓋を開ければとにかく心理描写が丁寧。留人にしても、倒すというよりかは葬ってやるという方が近い。
他の方のレビューにも書かれている通り、『死とは何か』『魂の尊厳とは』『生きるとは何か』という点についても深く考えさせられる、繊細で哲学的な作品です。
それでいて、ジジイやババアが強い!というキャッチコピーには嘘がない。ホラーものにもっとも重要な、ぞわぞわとした怖さも兼ね備えている……。

ゾンビものとしてもポストアポカリプスものとしても完成度の高い、実に良い作品です。
続きが読みたいような気もするし、これで終わるのがもっとも美しいような気もしますが、どちらにしてもケイ君は逞しく生きていく事でしょう。そう考えると、少し救われる気がしますね。

その他のおすすめレビュー

クオンタムさんの他のおすすめレビュー5