介護ロボット『ラポール』を軸に据えた介護と終末期の物語。
AIやロボットなどの発達によって、将来この物語のようなことが現実でも起きるのではないかと思わされるが――多くの人が介護を委託している現代においても、十分にありふれた光景なのではないだろうかと非常に考えされられた。
特に見届ける物の心情は真に迫っていて、自分がこの立場に置かれた時のことを考えてしまう。
機械に全てを任せてしまうことの怖さ、介護の大変さや苦労などを天秤にかけた時、その選択を責められる人間はいないだろう。
しかし、それでも思ってしまうのだと思う――
幸せだったのだろうかと。
甥である大学生の青年の一人称で、彼から見た認知症の伯母と介護ロボットのラポールのやり取りを淡々と描写しています。
よくある日常に見えて、どこにでもある認知症のご老人の介護という感じがして、ラポールはもうすでにこの平成の世の中にもいるのでは?と思ったくらいです。
認知症患者の介護は大変です。特に同じことを何回も繰り返すのに付き合うのはこちらの神経が参ってしまうことで、こうしてロボットにお願いできたらみんな幸せになれるのかもしれない。
最後の、伯母さんが亡くなった後のラポールの処遇については、切なくなりました。
伯母さんにとっては一番信頼できる姉だったラポール。
でも、ラポールはロボットなんだ……。
ロボットとか、介護とか、そういう枠を越えて、人間の死や死に対する感情についても思いを巡らせました。
これほどまでに素晴らしいロボットが生まれたならば、どれほど良いことだろうかと思わずにいられませんでした。
普段はバトル系のロボットばかり書いている僕達ですが、こういった人の生活に寄り添う道具としてのロボットについて書いてみるのも面白い試みですね。
ロボットが好きな人も、ロボットジャンルとかに興味が無い人も、介護を主軸とした遠い未来が舞台のSFとして一度味わってみると良いと思います。
主人公の目を通じて描かれる伯母さんとロボットの最後の日々は儚くも暖かいものでした。
此処から先はもう読んだ人向けに。
思い出が淡くなったとしても、それを美しいままにできるのならば、人間よりも機械が介護したほうが良いのではないかと思います。
貴方はどう思いましたか?
介護ロボをテーマにした短編小説。正しく人に寄り添うロボットとして開発されたロボット”ラポール”が、話の軸となっている小説です。
人間以上に老人へと向き合い、人間以上に老人から頼られる。そんなラポールはこの上なく優秀な介護ロボットには違いないのですが、そこに意思や感情のやり取りはありません。
ただし、老人にとっての相手になり得ることで、この上ない救いとなるのも確か。
そこに、本作品の重要な軸が含まれています。
単なる自動化へのアンチテーゼでもなく、諸手を挙げて称賛するでもなく、これは”ラポールが存在したら起こり得る一つのお話”である事に意味があるのかも知れません。
年を経るごとに実感が増して来る、そんな一遍です。