力に翻弄されし少年は、苦悩と戦闘の中に何を見出すのか

千年もの時を超えて蘇った怪人『ミュータント』達。
その中でも何物にも属さない唯一無二の存在『エルガイア』の力を授かった主人公が闘いに身を投じることを余儀なくされる、特撮ヒーロー系のアクション作品です。

戦闘シーンが、とにかくカッコイイ!
変身からフォームチェンジ、また圧倒的な破壊力を持つミュータント達それぞれの個性的な能力の描写が素晴らしく、まるで映像作品を見ているかのよう。

けれどこの作品に私が最も胸打たれたのは、登場するキャラクター達の心理描写です。

主人公・拓真は普通の高校生。
圧倒的な力を得たといっても心が付いていかず、悩み苦しみます。
自分はエルガイアではない、それでも戦いを挑まれ続ける限り逃げることなどできない、何故こんな理不尽な目に、何故分かり合えない――彼の苦悩は等身大で、生身の人間であることをひしひしと思い知らされます。
それゆえ共感を誘うだけでなく、緩やかに成長していく様にもリアルさがあり、応援するというより同化したような気持ちになりました。

また倒されるべきミュータント達の思い、これが重い。
復讐心に燃える彼らも同じく苦悩し、哀しみを抱えています。

何故戦う、何故分かり合えない、何故……とただ戦って勝敗を決するのではない、深い痛みに満ちた戦闘を繰り広げるのです。

そして拓真の自称彼女・ゆっこに、警察官の舘山寺と木場。
彼らもそれぞれ強い思いと葛藤を抱え、拓真を支え鼓舞します。彼らなくしては、拓真はエルガイアとして戦うことはできなかったと述べても、過言ではありません。

戦闘に次ぐ戦闘。しかしそこには、数々の痛みと苦しみが渦巻いています。
だからこそ一つ一つの戦いが、真に胸に迫る!

この作品には、綺麗事などありません。
皆、そんなものでは片付けられないものを抱えているから。

痛みに喘ぎ、苦しみに藻掻き、未来へと足掻く、魂を削られるかのような熱い物語です。

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