眼に見える異星を訪ねる

はー、面白かった。

双子惑星の向こうにいる女の子に会いに行く物語。惑星間の航行はいまだ確立されていない。発明家や技師の仲間たちと、ときに挑戦し、ときに挫折し、それでも奮起し、異星を目指す。

まず面白いところは、「双子の惑星」という作品舞台だ。互いに望遠鏡で覗くことしかできない環境。そこで向こう側の女の子と「出会う」、主人公スレツ。なんて素敵な構造だろう。

科学水準は産業革命直前程度でなじみ深い世界観。だが、そこから天才的な発明家たちがどんどん事を起こしていく。双子惑星ゆえに生起する嵐や海嘯などの自然現象も、しっかりと物語に配置される。

圧巻は、主人公たちが挑む、惑星間に亘る空気の動きの描写だ。好きな小説にグレッグ・イーガンを挙げる筆者だけあって、双子惑星で起こるであろう自然現象を鮮やかに描く。個人的にここがグッときた。

だが、筆者のプロフィールにあるように、「専門用語による理論武装」に対しては禁欲的。あくまでも主人公や発明家・技師の口や手技・実験からこれが語られる。

魅力の第二はこれらの登場人物だろう。結局、科学を衝き進めるのは人間の想いなのだと感じさせられる。主人公スレツを中心に、人物たちがどのように想いを深化させていくかも、本作の大きな見どころだ。

他に、双子惑星のそれぞれの社会や文化が似ているようで異なっている点など考えさせられる点は多い。だが、もうこれ以上ここで言を積むのは詮無きことだだろう。本作を読み始めたほうが断然早い。ぜひ味読を。

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