《惑星エフ》と《惑星ジー》という二つの星を巡る物語。
《惑星エフ》から《惑星ジー》を望遠鏡で覗いてるスレツは、一瞬――作中の単位で『一メモリ』だけ会える少女ジェムに会いたいと願う。しかし、《惑星エフ》には航空技術がなく、《惑星ジー》に向う手だてはない。
この物語には、スレツが一人の少女を願うロマンチックな側面と、そのための発明を開発する発明史の二つの側面がある。発明史を支えるのはライニーカールという女の子で、彼女の直向きさや、特別でありたいという感情は、おそらく誰もが一度は抱いてしまう感情で、ものすごく読者に突き刺さると思う。彼女の他にも、天才のジジジクや『錬素局』のミヒトなど、個性豊かなキャラクターが登場する。
作中で語られる技術や単語にもオリジナリティがあり、それらが童話のような優しい雰囲気で綴られ、まるで『スタジオ・ジブリ』のような冒険活劇が繰り広げられる。
物語の佳境でスレツとライニーカールが《惑星ジー》に向って飛び立つのだが、それまで二人の行動を見守ってきた読者なら思わずガッツポーズをしてしまうだろう。その後の二人が、無事に《惑星ジー》にたどりつけたのか、望遠鏡で見ることしかできなかった少女ジェムと出会えたのかは――
ぜひ、その目で確かめてほしい!
第一章まで読ませていただきました。登場人物達の独特な名前は、回を増す毎に音として不思議と心地よく響いてきます。そして、人物、そしてそれを取り巻く環境の描写力がとても細かく、物語の中で生きてるなぁ、ということを感じられました。個人的に一番ぐっと来たのが第3話でのライニーカールの実験のシーンの描写にワクワクしていました。発明、本当に楽しいです。
そして、スレツが純粋で可愛らしい!そして一途!これはもう女性はスレツが可愛くて仕方がないかもしれない、そんな愛される主人公です。
宇宙へ飛び出す。これもまた、綺麗に描かれていて、作者様にしかできない技といいますか、描写だと脱帽致しました!
綺麗だけでなく、熱さを感じる作品です。
はー、面白かった。
双子惑星の向こうにいる女の子に会いに行く物語。惑星間の航行はいまだ確立されていない。発明家や技師の仲間たちと、ときに挑戦し、ときに挫折し、それでも奮起し、異星を目指す。
まず面白いところは、「双子の惑星」という作品舞台だ。互いに望遠鏡で覗くことしかできない環境。そこで向こう側の女の子と「出会う」、主人公スレツ。なんて素敵な構造だろう。
科学水準は産業革命直前程度でなじみ深い世界観。だが、そこから天才的な発明家たちがどんどん事を起こしていく。双子惑星ゆえに生起する嵐や海嘯などの自然現象も、しっかりと物語に配置される。
圧巻は、主人公たちが挑む、惑星間に亘る空気の動きの描写だ。好きな小説にグレッグ・イーガンを挙げる筆者だけあって、双子惑星で起こるであろう自然現象を鮮やかに描く。個人的にここがグッときた。
だが、筆者のプロフィールにあるように、「専門用語による理論武装」に対しては禁欲的。あくまでも主人公や発明家・技師の口や手技・実験からこれが語られる。
魅力の第二はこれらの登場人物だろう。結局、科学を衝き進めるのは人間の想いなのだと感じさせられる。主人公スレツを中心に、人物たちがどのように想いを深化させていくかも、本作の大きな見どころだ。
他に、双子惑星のそれぞれの社会や文化が似ているようで異なっている点など考えさせられる点は多い。だが、もうこれ以上ここで言を積むのは詮無きことだだろう。本作を読み始めたほうが断然早い。ぜひ味読を。