キャラクターも世界観も良いです。
ミステリーというよりも、昭和のレトロが香るハートフル・ライト諜報機関物、という印象を私は受けました。大好物です。
お兄さんとおっさん方が良い味を出しているのも、この物語の雰囲気を実によく高めています。文体も、必要以上に堅苦しくならないよう、良い塩梅になっています。
優秀なのにいじらしい明智も、頼りないけど意志堅い旭も、個性豊かな同僚の面々の言動も、とても面白いです。
しかし、四話と五話の間の話を省略したのが、個人的にはとても不満です。四話と五話の間にあったであろう話は、とても重大で、それこそ一番魅力的に光る話です。ストーリーの流れ的にも、この短編集の山場となったはずです。様々なキャラクターの想いや意思がぶつかり合い、読者の心を鷲掴みにし、虜にし、五話の決断をより一層魅力的に描くための布石ともなったはずです。一番の山場を削るとかありえません。今すぐにでも、『話』としてしっかり独立させ、絶対に書くべきです。
主人公がとっても魅力的です。生真面目でプライドが高く誠実で繊細で不器用で……こんなんじゃさぞ生きにくいだろうに。でも彼は逞しく、重大な責任を負ったスパイとしての任務を鮮やかにこなしていく。カッコイイ……惚れました。僕も男だけど。
周囲の人間も良い味を出しています。彼ら彼女らの紡ぐハートフルな物語は、ただの青臭い理想主義に終わらない説得力があり、不覚にも涙腺が緩みました。いいですね。殺伐とした話ばっかり書いてる僕には眩しい世界です。
丁寧な心情描写を織り交ぜて、登場人物の背景を浮き彫りにする技術に感心しました。繰り返しますがとても丁寧に書かれています。時代考証は僕は専門ではないので、評価判断できないのが残念ですが、他のレビューを見ると可能なかぎり努力されているようで、読んでいてもその熱意は伝わってきます。
読んでて本当に幸せな気分になれる作品です。粋です。
結構硬い作品なのかなぁと最初は読み進めましたが、読んでいくうちにそれはすぐにふっしょくされました。
一話一話が作者さんの配慮もあり読みやすく、すぐに物語にのめり込めました。
スパイである明智くんはすばらしい長所を数多くお持ちのようですが、残念ながら女子と接することが苦手のようで、これが彼のスパイという本質をものの見事に台無しに……。
これではまともにスパイも務まらないのでは笑……と思ってみたり思ってみなかったり。
スパイものはジョーカーゲームくらいしか読んだことがなかったのですが、この作品もそれくらいに面白い。
これから明智くんがどんな女子と関わっていくのか、そしてスパイとしての役割を果たせるのか。
見所満載で楽しみです!!
戦前の日本。軍拡が叫ばれ、平和な喧騒が静まり返ってくる暗い時代。
子供の頃読んだ、推理小説を彷彿とさせる重い時代背景。
主人公は、同僚の一歩あとを進むことを甘んじて良しとしている諜報員。
容姿、学業、運動神経、全てを兼ね備えながら女性が苦手。諜報員としては一流未満でも人間的には愛すべき存在。
そんな彼に与えられる任務は、なぜか女性絡みが多いのも確か。
彼と同じかそれ以上に、魅力的かつ個性的(奇矯?)な同僚たち。
作者さんは、ある大学のミステリー研究会出身ということもあり、犯人当て、ハウダニット、カーアクションなど、ミステリ要素も多彩かつ完成度も高いこの一作。
捜査の中にあって、恋愛要素も少なくありません。
新しい形、上質な香りのミステリをどうぞ。
(……くんくん、なにやら多彩なカップリングを想定した、BLの香りもするよ……(-_-).。o○0〇
昭和15-16年を舞台にした、スパイ活動の物語。
諜報員、陸軍、戦争、歴史といったテーマから一見すると、重く固い内容と捉えがちですが、読んでみるとすんなり入り込むことができます。
物語は諜報員明智さんを主人公に、個性的でイケメンな諜報員の面々を中心に進んでいきます。
仲間たちとかっこよく駆け回る時もあれば、お茶目な失敗をすることも。そして大いに悩む。
戦争前の苦しい時代を舞台にし、その時代に生きた人間の泥臭いドラマがたっぷり味わえる作品です!
様々なスパイ活動を通して成長していく姿は見ものです。
また、所長の入試試験、旭さんや仲間たちの想い。
諜報機関の目指すビジョンがしっかりしていて、素晴らしい団結力に感動です。
最新の第4話 7までを読んでのレビューになります。
問答無用で面白いスパイミステリー小説です。ここに魔法のようなコメディのスパイスがふりかけられ、また根底に厚みのあるドラマが流れていて、極上のエンターテイメント小説になっています。
特筆すべきは主人公のスパイ明智君でしょう。文武両道、外見もよく、クールで頭脳明晰、と長所を数え上げればきりがない彼ですが、女性が苦手という短所ですべてを台無しにしています。そして事件には必ず女性が絡んでくるものだから、嫌な予感一杯を楽しみながら彼の活躍を追いかけることになります。さらに彼の脳内で展開される明智ワールドがまた実に楽しい。なんとも応援したいというか、見守りたくなるキャラクターなのです。
さらにこのスパイ組織の面々がまた曲者ぞろいの楽しくも熱い面々。熱い正義の想いを抱きつつ、みんなそれぞれ事情があったり、独特の活躍をしたりと、物語にグッと深みを増してくれます。
大戦前の昭和をイメージした世界観が見事な文章とともに表現され、その中をスパイたちが駆け抜けていく光景は臨場感たっぷりです。もちろんミステリー要素もすばらしく、謎解きの爽快感もあります。
とにもかくにも是非読んでほしい物語。幸いにも連載中なので、今から読み始めてはいかがでしょう?