概要
長崎県の五島列島、サンゴの町の物語
都会の会社員生活に疲れた主人公は、故郷の長崎県福江島に昔あった富江町を訪れる。富江町はサンゴの町。今はここに実家はないが、魚釣りや磯遊びをした海は昔のままだった。町でたった一つの写真館で見つけた一枚の写真、そこに写った真紅のサンゴの首飾りの女性の姿が主人公を勇気づける。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!島の情景と故郷の与えてくれる力が美しく描写された作品
離島の風景は変わる。合併で小さな町はなくなり、人口は減り、かつて栄えた産業も往時の面影はない。しかし、それだからこそ、そこを旅立った人にとっては懐かしい思い出となる。いつか帰りたい場所となる。
本作は、そんな離島で少年時代を過ごした主人公の物語である。
今は都会に住む主人公が、実家もなくなった町に帰ったのは、郷愁からだろうか。それは読者の想像に任されているが、故郷の景色は都会に疲れた主人公の心を大いに癒やしてくれた。そこには昔遊んだ海があり、そして、恋の思い出がある。
美しい海岸の描写と、町を代表する産業だった真紅の珊瑚が、古い恋の思い出を引き立てている。それは過ぎ去った恋であっても、…続きを読む - ★★★ Excellent!!!同じ島の風景を知る者として
福江島の富江は、漫画『ばらかもん』の村を擁する町だ。
若手女優の川口春奈さんの故郷から、2つ3つ離れた集落だ。
私も福江島に住んでいたことがある。
母が富江に勤めていた時期もある。
富江の黒々とした瀬はよく覚えている。
瀬の色が黒いから、海は清楚な紺碧だ。
南海の砂浜のきらきらしいエメラルドグリーンではなく、
五島の海は、切り立った瀬の色を透かして凛としている。
厳しくもたおやかな恵みの海と、
海岸線にすぐ迫る山の常緑、豊かな実り。
私と筆者の海辺野さんでは0.7世代くらいズレがあるけれど、
見知った景色はほとんど同じだと思う。
『ばらかもん』に描かれるのは紛れもなく21世紀の五島の姿だ…続きを読む