離島の風景は変わる。合併で小さな町はなくなり、人口は減り、かつて栄えた産業も往時の面影はない。しかし、それだからこそ、そこを旅立った人にとっては懐かしい思い出となる。いつか帰りたい場所となる。
本作は、そんな離島で少年時代を過ごした主人公の物語である。
今は都会に住む主人公が、実家もなくなった町に帰ったのは、郷愁からだろうか。それは読者の想像に任されているが、故郷の景色は都会に疲れた主人公の心を大いに癒やしてくれた。そこには昔遊んだ海があり、そして、恋の思い出がある。
美しい海岸の描写と、町を代表する産業だった真紅の珊瑚が、古い恋の思い出を引き立てている。それは過ぎ去った恋であっても、最後に登場する写真は、今の主人公を勇気づけるのに充分だった。
過去の思い出が未来への勇気となる、故郷とはそんな場所だ。主人公は、都会に戻って再び奮闘努力するのだろう。
今ではめったに見られなくなった美しい海の情景描写が懐かしい。
福江島の富江は、漫画『ばらかもん』の村を擁する町だ。
若手女優の川口春奈さんの故郷から、2つ3つ離れた集落だ。
私も福江島に住んでいたことがある。
母が富江に勤めていた時期もある。
富江の黒々とした瀬はよく覚えている。
瀬の色が黒いから、海は清楚な紺碧だ。
南海の砂浜のきらきらしいエメラルドグリーンではなく、
五島の海は、切り立った瀬の色を透かして凛としている。
厳しくもたおやかな恵みの海と、
海岸線にすぐ迫る山の常緑、豊かな実り。
私と筆者の海辺野さんでは0.7世代くらいズレがあるけれど、
見知った景色はほとんど同じだと思う。
『ばらかもん』に描かれるのは紛れもなく21世紀の五島の姿だし、
川口春奈さんの健康的な清楚さは五島の環境が育んだと信じてる。
富江は昔、栄えていた。
遣唐使のころにも役所があったようだし(遺跡調査報告あり)、
15世紀ごろは倭寇(いわゆる海賊商人)の拠点でもあった。
江戸時代には密貿易商人の巣窟として、非常に裕福だった。
五島全土にそういう「隠れた富貴」の歴史は転がっているけれど、
比較的最近まで繁栄を保った富江は、少し特殊だ。
珊瑚という富貴の象徴を、富江は産していた。
その印象は、私にとって非常に強烈だ。
あでやかな珊瑚のアクセサリーは当然ながら高級品で、
今でも富江の特産品であり、福江の港でも空港でも売られている。
2000字に到底入りきれない背景が、この物語にある。
無論、知識など不要の郷愁の物語として読めるけれど、
よろしければ、富江の景色と珊瑚の赤さを検索していただきたい。
「ひとみ」の脳内キャスティングは川口春奈さんで、ぜひ。
海辺野さん、
今年のコンカナのワインはどぎゃんやったですか?
新橋で、皆さん、何か言いよらしたでしょ?
気になっとっとです。
一昨年んとは酸っぽおしてダメやったばってん、
少しはおいしゅうなっとりますか?
今度、新橋に行くごて用事のできたら連絡します。
なっじま直送の魚ば肴に、書きもんの話ばしましょう。
あ。
参加されたい方、おられます?
東京にも、五島から空輸で魚を仕入れる居酒屋があるんです。
五島人が刺身で食べてOKを出す鮮度の、おいしい魚です。