同じ島の風景を知る者として

福江島の富江は、漫画『ばらかもん』の村を擁する町だ。
若手女優の川口春奈さんの故郷から、2つ3つ離れた集落だ。
私も福江島に住んでいたことがある。
母が富江に勤めていた時期もある。

富江の黒々とした瀬はよく覚えている。
瀬の色が黒いから、海は清楚な紺碧だ。
南海の砂浜のきらきらしいエメラルドグリーンではなく、
五島の海は、切り立った瀬の色を透かして凛としている。

厳しくもたおやかな恵みの海と、
海岸線にすぐ迫る山の常緑、豊かな実り。
私と筆者の海辺野さんでは0.7世代くらいズレがあるけれど、
見知った景色はほとんど同じだと思う。
『ばらかもん』に描かれるのは紛れもなく21世紀の五島の姿だし、
川口春奈さんの健康的な清楚さは五島の環境が育んだと信じてる。

富江は昔、栄えていた。
遣唐使のころにも役所があったようだし(遺跡調査報告あり)、
15世紀ごろは倭寇(いわゆる海賊商人)の拠点でもあった。
江戸時代には密貿易商人の巣窟として、非常に裕福だった。
五島全土にそういう「隠れた富貴」の歴史は転がっているけれど、
比較的最近まで繁栄を保った富江は、少し特殊だ。

珊瑚という富貴の象徴を、富江は産していた。
その印象は、私にとって非常に強烈だ。
あでやかな珊瑚のアクセサリーは当然ながら高級品で、
今でも富江の特産品であり、福江の港でも空港でも売られている。

2000字に到底入りきれない背景が、この物語にある。
無論、知識など不要の郷愁の物語として読めるけれど、
よろしければ、富江の景色と珊瑚の赤さを検索していただきたい。
「ひとみ」の脳内キャスティングは川口春奈さんで、ぜひ。

海辺野さん、
今年のコンカナのワインはどぎゃんやったですか?
新橋で、皆さん、何か言いよらしたでしょ?
気になっとっとです。
一昨年んとは酸っぽおしてダメやったばってん、
少しはおいしゅうなっとりますか?
今度、新橋に行くごて用事のできたら連絡します。
なっじま直送の魚ば肴に、書きもんの話ばしましょう。

あ。
参加されたい方、おられます?
東京にも、五島から空輸で魚を仕入れる居酒屋があるんです。
五島人が刺身で食べてOKを出す鮮度の、おいしい魚です。