地上に「人間界」がある様に、もし天上に「天界」があるならば、そこではやはりコミュニティが形成されている事でしょう。
人間が「天使」と呼ぶ存在に社会があるならば、正しくこの作品で綴られている様な日常が繰り広げられている事でしょうね。
本編ではそう言った「現実的な」天界の描写から始まります。
とても人間臭いと言って良いそこでの生活では、やはり人間界でも繰り広げられるやり取りが行われています。そしてやはりその世界での下界「人間界」でも、残酷な間での「現実」が存在しているのです。
一人の天使?が直面する、人間界での残酷な現実と迫られる決断。その答えは作中でご確認ください。
練り込まれた設定は圧巻であり、だからこそその世界が自然に受け入れられる描写は秀逸です!
細部まで手の行き届いた設定と、その提示の仕方が見事で、物語に引き込む吸引力を持った作品でした。
組織図ができてしまいそうなくらいによく練られた天界の会社の設定が面白いです。
大人になった天使たちが会社勤めをする、しかもその姿は現代のサラリーマンを彷彿とさせるから、天使×サラリーマンというギャップによるユーモアがよく効いています。
それでも、物語がコメディではなくドラマの方向へ向かっていくだろう空気は、例えば皮膚感覚的で柔らかな筆致や疲れたトナカイの件などできちんと作られていて、後の展開が違和感なくすとんと心に落ちてくるような感じがしました。
主人公が惰性で仕事をこなそうとしている反面、下界の様子を見ることがほとんどなかったパートナーはそれができない。
この関係がよく生かされています。
主人公がなぜ下界の人々に感情移入しないようにしているのかを示すと共に、その彼が再び人間へ心を寄せていく一つのトリガーとしても機能していたように思います。
そして目の当たりにしてきた辛い現実が、さらに状況を悪化させていたことで、押さえつけていた感情が爆発するところは、胸に迫るものがあります。
目の前に横たわる哀しさに共に心を痛めることができ、だからこそそれが報われるラストに心を浸すことができる、ヒューマンドラマとして上質な作品でした。
聖夜に活躍するサンタクロース。彼らは皆、天界に存在する会社のスタッフ。それぞれが属するセクションにおいてそれぞれのミッションを全うするため日夜励んでいる――そんなスタッフの中に「気付いた者」がいた。己のもうひとつのミッションに。
本作は、サンタの素性を明らかにしてそこから物語を発展させるクリスマスファンタジーですが、設定にかかる説明を必要とする作品は正直難しいです――読者を置いてきぼりにして自己満足に陥る危険が大きいからです。
異能の力や異世界を題材にしたものの中にその手のマスターベーション小説が多く、能力や世界観に関する冗長な説明に「勘弁して」と思ったのは一度や二度ではありません。
ただ、同じ分量で同じことを書いてもぐいぐい引きつけられる作品があるのも事実です。それは「見せ方」によるところが大きく、読者の立場に立って、いかに簡潔にいかにわかりやすく伝えるかが重要です。分量も然りですが「設定が強引」なんて思ってしまうと興味が殺がれます。リアリティが感じられない話は一気にストレスが溜まります。
前置きが長くなりましたが、本作は設定部分の刷り込みはとてもスムーズです。最低限必要な情報をパートパートでストーリーに乗せて説明することで、読者の頭の中にスーッと入ってきます。説明パートの描き方がこの手の作品の大きなポイントであることを考えれば、この時点で本作は合格点に達しています。
物語が動いた後も、ストレスフリーで流れるように読めます。あっという間です。大部分の読者は予定調和のハッピーエンドを望んでいます。障害を設けて適度に焦らす手法も効果的で良かったです。
難しい言葉を使った、くどい描写を並べたマスターベーション小説もありますが、物語がなかなか進まないのはイラッときます。「あなたがボキャブラリーが豊富なのはわかったから、話を進めて」といった言葉が喉まで出掛かります(笑)そのあたりのさじ加減もバッチリでした。
サンタの活動はクリスマスに限られるものではありません。クリスマスに向けて常に「going(営業中)」なのです。同時に、ボクたちの執筆スタイルも確立されたわけではなく、常に「going(進行中)」――言い換えれば、進化を遂げる可能性があるのです。
長々と偉そうに言って申し訳ありません(ボク自信に対する言葉でもあります)。クリスマスらしい良作であると同時に、とても良い試みでした。これからも新たな文章にチャレンジしてください。作者にはそれだけの才能&キャパがありますからね。
とにかく「物語」というよりいいお話だった!という感想です。
ボリュームは中編というところでしょうか、物語に引き込まれてあっという間に読み終えました。
恋人同士のサンタ天使(ちょっとニュアンスが違うかもしれませんが)は、クリスマスに配達をしています。二人の所属する部署が現代の企業みたいな構成になっており、このあたりがまた独特で楽しめます。この二人クリスマス当日に子供たちにプレゼントを配って回るのですが…と、ここからはご自分の目で。
細かい設定もさることながら、もっと大きな問題にも目を向け、もっと幸せな世界、もっと暖かな世界を志向する作者の優しさが心にしみてきます。
クリスマスまでに読んでほしい心暖まる名作!
絵本として本屋に並んでいそうな作品です。
小さいお子さんのいらっしゃるパパとママはきっとこのお話を読み聞かせたくなるはずです。特に前半部分。
後半部分は少し大きいお子さんや大人の皆さんに。
クリスマスにふさわしいハートウォーミングストーリー。
奇跡が起きる聖なる夜。
でも奇跡を起こすのは人を思いやる優しさや願い。
もちろんフィクションですが、すんなりと理解できる設定と展開にに脱帽です。
今頃、各部署ともにお忙しいのでしょうね(^_-)-☆
お疲れ様です。
このオフィスのみなさんにメリークリスマス!
今年のクリスマスも頑張ってくださいね。
そしてあの家族には……。
やっぱりメリークリスマス。
聖なる夜には奇跡が似合います。
作者さまにもメリークリスマス🎄
まず思ったのは、空想の世界だとは思えないほど、とてもよく練られた設定であるということ。
子供の頃に読んでたら、本気で信じたのではないか、と思うくらい非常にリアルに描かれています。凄い!
物語は、クリスマスの日に、子供たちへとプレゼントを配達する部署で働くミカエルと、トナカイのメンテナンスのために同行することとなったミカエルの彼女ラファエル、二人のお仕事ほのぼのストーリー? と思いつつ読み進め「クリスマスが終わったらデートしよう」なんてミカエルの台詞に、きゃっ♡なんて照れながら、このまま進むのかと思いきや……
地上へ降り、家族という絆で結ばれた人間に、ラファエルが興味を持つあたりから、物語は別方向へとシフトしていきます。
そこからがまさに涙涙の感動ストーリー。
クリスマスにぴったり。
最後はほっこり温まります♡
天使を卒業すると、天界にある会社組織の一員として業務に励まなければならない。ミカベルは配達係。そして最も多忙なクリスマスを迎えるわけであるが……
まずはこの物語の設定が面白いですね。現実社会の会社組織をなぞらえたような、若手社員の仕事に対するモチベーションの在り方について、とても天界の出来事とは思えないほど、リアルです。しかも社内恋愛に相当する彼女も現れて、と、現代ドラマでもすぐにお話ができそうなくらいです。
もちろんファンタジーである以上、夢があります。現実と夢を上手く融合させているのは、さすがです。
後半からは、より具体的な展開になります。ここらで涙を誘う盛り上げかたは、心憎い演出です。もちろん、私も遠慮なく涙いたしました。
引かれた伏線からの、思いもよらぬどんでん返しは驚きました。上手い!
ハッピーエンドを迎えることが、果たしてできるのでしょうか?
クリスマスシーズンにはもってこいの、とても素敵な良作です。