ひとりの少女が見た文明開化の時代

山の中の社で、神に祈りを捧げるためだけに養われている少女。
けして悲壮な雰囲気の物語ではありません。しかし退屈を持て余す凛子は普通の少女に見えて、読みながらふと切なくなることも。
まだ十歳の彼女には苛酷な運命ですが、神性を守るため、日本中で、いえ世界中で似たようなことが行なわれてきたのではないかと想像させられます。
とは言え、村人たちが悪いとも思えません。村人たちの信仰は素朴で純粋なもので、殖産興業のために追いやられていくのを寂しくも感じます。
何が凛子の幸せだったのだろう。何がこの村の幸せだったのだろう。
民俗学的なものがお好きな方におすすめの短編です。

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