創作ノート

時計仕掛のメルヘン

絡繰り人形仕掛けの時計塔内部。

この物語の仕組みをあかします。




   1



虹をおびた瑠璃の羽根色の小鳥、

アオハチドリの画像をみたとき、


“寝かせた儘にしてた物語を書き上げよう”


そう思ったのです。



もともとは私の夢で、

支離滅裂つじつまが

あわないお話でした。


夢幻的な雰囲気にするため、

あえて夢の曖昧さや不条理さを残しています。

むしろ理路整然たる夢のほうが不自然でしょう。



キーワードは、


小鳥、魂。

ノゥスィンカ、人形。

冬、窓際、兄妹。


――です。



このイメージに、


『雪の女王』

『エロスとプシュケ』

『オルフェウスとエウリュディケー』


とかを下敷きとして重ね合わせていきます。


そうそう、メーテルリンクの

『青い鳥』なんかもありますね。


何か、あるいは誰かを探し求める物語です。

無数にあるメルヘンのパターンをなぞります。



   2



ノゥスィンカは魔術師に

作られた魂のない人形で、

彼が年老いて死んだ後も、

彼女だけが生きつづける、

というか、ありつづける、


これが昔の設定でした。



“ノゥスィンカ自身が、

力のある魔法使いで、

自分を人形に変えた”


こんなふうに改めてみ、

深みがでた気がします。



   3



書こうと考えたのは

3つのシーンです。


窓際のシーン

妹にかかった魔法が解けるシーン

ラスト“冬の庭”


まず、それらを書いてから、

間を埋めていく作業でした。



1/4 魂の小鳥~人形の魔女

2/4 冬の街~雪の窓辺

3/4 埋葬~冥府行

4/4 奪還~冬の庭



これで短いメルヘンになります。



   4



“人形”で画像検索して気に入ったものを拾い、

それにキャラを当てはめエピソードを書きます。


いつのまにやらなんとなくメルヘンから、

ファンタジーにクラスチェンジしました。



――「さあさあ、おいで、子供達。これから人形劇をはじめよう。

りんご飴がチケット代わり。楽しんでくれるといいがね。

ところで、ちょっと不道徳な内容かも。お父さんお母さんには、ないしょだよ」


ハメルーンの笛吹きのように色とりどりの端布はぎれの衣裳を纏った、

白塗りの顔に黒い涙の道化師がまっ赤な唇でニタリと笑う。



ほのぼのメルヘンからタイトル詐欺のダーク・ファンタジー?



   5



ときどき、ですます調の文体なのはメルヘンのなごりです。

あえて統一はしませんでした。


また、視点移動や人称変更は、新人賞等の公募では下手に扱うと減点対象になるそうですが、

かまわずに、一人称、三人称単視点、三人称神視点と気分――もとい、


そのシーンそのシーンに合わせて最適化しています。



改行がやたらと多いのは、

もともとブログに載せたものなので、

携帯でも読みやすいようにしたせいです。


文頭で字下げしていないのも仕様です。

詩文のような感じで書いてます。



無難でつまらない駄作より、

書いていて面白い失敗作。


というのがモットーです。



   7



メインキャラは、少年、魔女、妹の三人でした。

それに下女さんが加わります。



妹の出番は少ないのですが、

そこにいないことによって、

他のキャラやストーリーに、

影響を与え続ける存在です。


私はこれを“不在の女神”と呼んでいます。


(女性ばかりとはかぎりません。

『めぞん一刻』の惣一郎さんとか、

そんな感じではないでしょうか)



   8



下女さんは一番のお気に入りです。


投稿するにあたって、

後半部分を倍くらい書き足しました。


ほとんどが彼女のところです。



彼女は登場の予定がなかったのに、

ひょっこり出て来た娘でした。


三つの試練は最後以外どうでよく、

ほかは全然考えていませんでした。


なので、彼女を引き立たせるためにだけ、

後から考えた完全なオーダーメイドです。



「せむしの子馬」のように、

主人公を助ける不思議な動物同様、


いびつな特徴をもった、

存在を想い描きました。



心理学の本にこんなことが書いていました。



せむしの少女の姿は、御伽話の中では、

数え切れないほど登場している。


せむしの醜さは、常に素晴らしい

美をかくしもっていて、


不思議な魔力から、少女を自由にしてやるとき、

その美しさがあらわれる。



彼女は、ノゥスィンカの影だったような気がします。


ノゥスィンカの力と美しさが、

絶対的になればなるほど、


彼女の存在が大きくなりました。



彼女は鏡の国のアリスのように、

最後はポーンからクイーンに変わります。



   9



中間点、ターニングポイントは、

館でノウスィンカに会う所です。


前半は少年の動機と旅の苦難です。

後半は打ちのめされている少年が下女さんと出会います。



寄り道はあっても脇道のないストーリーなので、

伏線といえるほどの伏線はありませんが、


自分は魂のない人形なんですよと、

下女さんが繰り返すことによって、

ノウスィンカとの類似を仄めかし、


ノウスィンカの意味ありげな言葉で、

クライマックスへの布石となります。



妹である人形を選び出すシーンで、

ノウスィンカがこれまでのように、

古めかしい言い回しをしていなくて、

普通の女の子らしい言葉遣いなのは、

妹が身代わりなことへのヒントです。



   10



根っこはラブストーリー


ボーイミーツガール

ボーイミーツドール

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ノゥスィンカの小鳥――人形の魔女とできそこないのメイド 壺中天 @kotyuuten

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