それは、語られることのない『勇者達』の物語

魔王が出現した絶望の世界で足掻く、『勇者ではない人々』にフォーカスを当てたオム二バスでした。
時に戦場で剣や槍を振るう兵士だったり、時には戦場とは離れた場所に生きる市井の人々であったり。しかしその全員にそれぞれの『戦場』があり、一貫して『戦う人間』達が描かれた、上質なお話ばかりでした。
人類が生き残るために一日でも、一秒でも世界が存続する時間を延ばせるよう。高い技量で描かれる文章の根っこには、人間性の持つ熱さが内包されていたと思います。
もはや短編オムニバスどころでななく、それぞれの人物が物語の主役を張れそうな『群像劇』と呼べる代物になっています。
そしてこれだけ多数の登場人物やストーリーを構築できる発想力や知識も、単純に凄まじいと思いました。

勇者じゃない人達を描く……という変化球的なスタートに思えながら、その根底にある王道ファンタジーの魅力と熱さ、そして面白さに満ちた一作でした。

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