短編ということで短いですが、書かれた文章、言葉には選び抜かれたかのように物語にハマってます。
モノだけではなく、人の心が連綿と受け継がれる。清々しい短編でした。
自主企画”短い「働くヒト」コンテスト”にご参加いただきました主人公(語り手)が働く人なのかと思いきや……ひと言も触れられていない、語り手の「もしかしたら後悔しているのかもしれない人生の選択肢」が行間から滲み出てくるようで、味わい深い作品でした
伝統工芸は好きです。職人さんの思いが詰まった大切な贈り物です。本作はその伝統工芸品である大島紬を主人公の小さなころからの思い出とともにクローズアップさせた物語です。最後に主人公が祖父の思いが込められた大島紬を着るところに祖父と主人公の絆を感じました。
良い作品です。物語は、お約束通りに展開します。ですが、全く飽きません。素直に読めます。或る意味、大島紬のような作品です。奇をてらう事なく、決められた作業を淡々とこなして逸品に仕立て上げる。そんな感じです。紡ぐのは大島紬に限らず、人間関係も。そんな幅の出る、着眼点の優れた作品だと思いました。短編にはMAX2つが信条なんですが、3つ付けました。
この作品で大島紬の素晴らしさを知りました。幼少の頃から大島紬に触れてきた主人公を羨ましくも思いつつ、ラストシーンの晴れやかさは、我がことのように感動できました。多くの方に呼んでもらいたい作品です。
序盤は大島紬の工房にいるように感じる、緻密な情景描写と共に主人公の祖父の人柄もにじみ出てきている。最初に音で始まるので、音楽を聞いているような気分にもなった。 題名にあるように「紡ぐ」のは、何も大島紬だけを指しているのではなく、人間関係も紡がれ、過去から未来へと紡がれていく壮大な話そのものだ。この壮大で優しい音楽のような話を、うまく規定文字数内に収めているところが、作者の筆力がうかがえるところだろう。 そして主人公の名前にも注目だ。
あの独特の深みは、手の込んだ工程を経て紡がれてたのですね。伝統工芸を受け継いできた様子が、とても丁寧に趣ある情景と共に描かれています。ラストもほっこり、暖かい作品です。読んでみて下さい。
消えゆく奄美大島の伝統工芸を題材にした掌編ヒューマンドラマです。島が誇る大島紬の技術を継承しないことにちょっとした背徳感を抱きつつも、時代の流れだと割り切って上京した青年。しかし、彼を繋いだのは、祖父によって紡がれた着物。その祖父にはもう会えないが、その温もりは今でも感じ取ることができる。伝統工芸の素晴らしさを読者に伝える良作だと思います。主人公の結介という名にも、その思いがこめられているような気がします。
なんとなく好きだった地元の風景から離れて一人で生活をしていくうちに、その風景を忘れていく。何もないところに帰るのも、そう言って帰らなかったことも多い。だけどその故郷には待ってくれている人がいることを、何もないところなんてないことを思い出させてくれました。糸と人の繋がりの糸、紡ぎのお話です。私はすでに地元に出戻った人間ですが、もし帰っていなかったら帰りたくなる作品です。
着物を通して細く長く受け継がれる伝統とまごころに心が洗われました。人恋しいとき、読みたくなる作品です。
素敵な郷愁。都会と田舎の激しいギャップを1文で表現している。くどくど描かない筆力。想いが距離を超えて繋がるような作品でした。
大島紬とお祖父ちゃんにまつわるエピソードが、できすぎじゃね?というくらい決まりすぎていて……でも、確かなドラマがあり、奄美と祖父を愛する心がじわじわと伝わってきました。最後の四行が素敵すぎて、☆入れるのをよそうと思ったくらいですw
着物の女王と言われる大島紬。作り方からその美しさまで、しっかり書かれています。織物の話を読んでるだけなのに、不思議と奄美大島に行きたくなる。それが「文化」の持つ力でしょうか。「東京の星は地上にあった」という言葉が印象的。栃木の田舎モノの自分にも、ずっしりと来ました。