この奇妙なホテル、事件の謎を数学で解け! つい引き込まれました。
無限に部屋が存在すると言うパラドックスの代表格「ヒルベルトの無限ホテル」。その奇妙な仕組みの解説とそこで起きてしまった1つの事件が上手く絡み、見事なミステリー作品に仕上がっています。ホテルは無限ですが真実は有限、たった1つだけ。ミステリーにあまり縁がない方や理系の方でも楽しく読める、頭を刺激する作品です。
なんとも不思議なテイストの小説でした。こういう発想をされている方の小説説は新鮮でかつ勉強になりました。レベルの高いミステリーだと思います。
「無限にあるという部屋」――「そこで起こる殺人事件」――数学的でありながら、軽快な筆致で語られていて、素敵なSFミステリィを読んでいるようで、ミステリィマニアとして、新鮮な感覚を得られました。余談ですが、久しぶりに、温泉に行きたくなったりも。
短い物語にしっかり謎があり楽しめた。また、個人的には『私』と『相方』が魅力的で、他にも二人の旅での事件を読みたいと思った。
ヒルベルトホテルの話を小説っぽく書いただけ…と思っていたらそんなことはありませんでした。最後までちゃんと元の話を残しつつ、小説に関係の無い部分については余計な説明を入れない。短編としてとてもきれいに整っているなという印象を受けました。というかあの話をこうも上手く利用できるものか、と作者様の発想力に驚かされました。
作者さまは、他ジャンルにも色々と力作を投稿なされているようですが、理系がさっぱり駄目で、文系寄りの思考である私自身は、この作品が一押しです。文章を読んでいて参考になりますし、何気にペンネームにも惹かれるセンスを感じます。
アリストテレスの古来より、無限は濫りに触れてはならぬもの……禁忌と同義でありました。時は流れ、ニュートンが極限をああしてカントールが集合をこうしてデデキントが何やら切断して、などという野暮ったい無限論の歴史はさて置いて、とにもかくにも無限というのは常識外れな性質を有することが判明するのですが、それを端的に示す好例がヒルベルトの提唱した〈無限ホテル〉でした。事件が起きるのは、提唱者の名を冠したまさにその〈無限ホテル〉。常識の通じない世界におけるミステリ、そしてその鮮やかな論理をご堪能あれ……!
非・現実的空間における現実的犯罪事件を推理します。本来ありえない場所に、読み手として自然に立てる楽しさは、作者様の導き手としてのたしかな実力の証と思います。