風は歌い届ける、遠い旋律を

 色々なものがツボな作品でした。木材の色合いが年月を感じさせるに違いない喫茶店とか、強い願いを抱いた少女とか、不思議なことを教えてくれる先生とか。物語にあるノスタルジックで童話っぽい、ほんわかする雰囲気が上手く引き出されていると思います。
 情景描写がすっと頭に入ってきて想像できて、私も人気の少ない喫茶店で歌声を聞き、ピアノの練習を見ているような気持ちになることができて……それに、貝殻。潮騒の音を背景に、どこかぎこちないヴァイオリンの旋律が聞こえてきそうだったあの場面が一番印象的でした。なんだか私も、貝殻に耳を当てたい気分です。

その他のおすすめレビュー

星 霄華さんの他のおすすめレビュー123