日本や東南アジアの空気が絶妙な具合でまざった世界観に引き込まれる、海の青がきらめくアジアン・ハイファンタジーです。『守り人』シリーズとかが好きな人におすすめですね。
まず、神女に守られた世界、謎めいた少女という王道に、独特の設定がふんだんに織り込まれた世界の描写に惹かれました。じっくりと読むほどに、青い海や草木が茂る平原、東南アジアを思わせる街並みが見えてくる。たすくやゆのかたち登場人物の、細やかな心の動きも、場面や描写を通して伝わってきます。特に後半は、まさしくクライマックス。ゆのかの悲壮な決意やあふれ出るたすくの叫びが印象深い。
物語はここで完結ですが、たすくとゆのかの、終章へ至るまでの旅路も深く切ない物語が想像できます。そういう物語の余白も、この作品の味を引き出しているように思います。