この色男、人生波乱万丈につき

人間というのは、多かれ少なかれ他人の顔色を窺って生きている。
相手が望んでいることをやって、相手から好意を勝ち得て、そして相手を支配しようともくろむ。
残念ながら、人間の本質というのは、たいがいそれだ。

この小説の主人公、その半生は不遇であったと言って間違いはない。
おおよそ幸せとはかけ離れた幼少期をすごし、そのあとも修羅場や愁嘆場の連続だ。
本人に問題があったというなら、それまでかもしれない。
だが、彼はそれでも、最善を尽くしてきたのだ。
ときにはねじけたことも考える。
相手を毀してしまおうとも考える。
突き放すのに、依存も高い。
だが、それは前述したとおり、人間の本質なのだ。
だから、この物語はこう言いかえることもできるだろう。

ろくでなしによる、人間賛歌であると。

気が付けば読了してしまう、非常にリーダビリティーのたかい傑作!

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