そこに正解はあったのか。正解を求める心こそ何かに捉われている証なのか。

魔族と機械族、相対する陣営に分かたれた先生と生徒。
正義と悪。子供心に抱えた単純な二元論は歳を重ねるにつれ幼稚なものとして薄れゆくも、いつの間にか気付かないうちにどこかで新たな「正しさ」に縋ってしまう自分がいて・・・
そんな矛盾を克明に映し出すのは、巧妙かつ無駄のない、非常によく練られたストーリー構成。
虚飾を排したシンプルな言葉は、童話的空気を醸し出すとともに、難しいテーマを読み疲れることなく読み切ることを可能にしています。
完璧な解決を求め、自分を犠牲にしても全てがうまくいく方向に突き進む・・・それは確かに尊い行為でありつつも、やはりどこか独り善がりな「正義」に囚われてしまっていた部分は無かったか。
しかし一方で、それぞれの正義に殉じて矜持を貫いた者たちの末路を無意味なものと断じることも、自分の「正しさ」を振りかざして他者を否定しているだけではないのか・・・
果てしない思考のせめぎ合いが読後に後を引く、心に残る作品です。

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