物理を1から作りましょう! ――見習い神様の世界創造

するめいか英明

第1章 慣性の法則

第1話 動かないね

 ボクは見習い神様のハム。今は理科の時間。


「ねね、ハムくん。何か思い付いた?」


 この子は見習い神様のサラミちゃん。ボクと同じペアになった女の子。


「うーん、まず何から決めればいいんだろうね?」


 ボクたちが頭を悩ませているのは、ついさっき先生が出した、今学期の理科課題。




『物理を1から作りましょう!』




 先生は一人前の神様。


 ボクたちもいつか先生みたいな神様になって、1つの世界を作るんだ。


 この課題は、いつか自分で世界を作る時のヒントになるってさ。




「やっほ! ハムくんとサラミちゃんはどんな物理法則を考えてるのかなー?」


 サラミちゃんとふたりでウンウン唸っていると、先生がボクたちの机にやってきた。


「うう、そもそも物理のルールを作るのって、最初に何をすればいいのかなって」


 サラミちゃんが正直に言うと、先生はニッコリと笑ってボクたちの肩を叩いた。


「そっか! じゃあまずは、石を1個、置いてみよう!」




 ● 「どうも、石です。よく堅いと言われます」




「ねね、黒丸が出たよっ」


 空中に映し出された黒丸を見てボクがキョトンとしていると、サラミちゃんが嬉しそうに声を上げた。


「物理法則っていうのは、物が動いたり、何かの状態が変わったりする規則だね! じゃあまずは、この石がどう動くかを決めようか!」


 先生がそう言うと、ボクはじっと止まっている石を見つめ、何となく


「ずっと、止まってるとか?」


 と言った。




 ● 「……」




「はは、何それえっ」


 サラミちゃんがおかしそうに笑うと、ボクはちょっと恥ずかしくなってうつむいた。


 だけど先生はニッコリ笑ったままで、嬉しそうにボクの肩を叩いて


「うん! いいと思うよ! 止まっている石が1つあるだけだと、石はずっと動かない! これ、1つ目の物理法則だね!」


 と言った。すると僕らの前に、文字が浮かび上がってきた。




『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、止まり続ける』




「わわ、ルールが出来たよっ。ねね、ハムくん、これルールだよっ」


 サラミちゃんが興奮してボクの腕を揺すった。


「う、うん」


 そんなサラミちゃんに、ボクはちょっと照れながらも、そのルールをじっと眺めた。


 そうか、動き方のルールには、止まっているってルールも含まれるんだ。

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