第7話 力が欲しいか
先生が手を腰にそえて、フフーンともったいぶった。
「影響っていうのはね、ある要因によって物体の運動が変化する現象とかのことだね!」
それを聞いて、ボクたちはポカーンとしていた。
そんなボクたちの様子を見て、先生は焦って
「あ、あれ? 難しかった? 例えばね、『私が石を下向きに加速させていく』っていう状況を考えようか!」
と言った。すると、さっきまでまっすぐ動いていた石がゆっくり下向きに曲がり始めた。
―=≡● 「ビューン」
↓
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● 「ビューン」
↓
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
● 「ビューン」
「あ! だんだん向きが下向きになって早くなってく!」
今までにない動きを見て、ボクは少し興奮しちゃった。
「そう! これが、石を下向きに加速させるという私の影響! こういう物理だってありえるんだよ!」
なるほど、「何かの影響がある」ってことは、「他の影響がない上で成り立っていたルールが成り立たないかもしれない」ってこと。
ボクたちの「慣性の法則」も、先生の影響があったら成り立たないんだ。
だからまっすぐ進まなくなったんだね。
「ねね、でも影響がある場合のルールって、どう決めればいいの?」
ずっと黙って先生の話を聞いていたサラミちゃんが、腕を組みながら首を傾げていた。
確かに、「先生のこういう影響がある場合下向きに加速する」とか「サラミちゃんのああいう影響がある場合どんどんゆっくりになる」とか色んな影響を並べていったら、ルールが書き終わらないよ……。
もっとシンプルに、影響の影響をルールに書けないのかな?
そんなことをウンウン考えていると、先生が
「そういうときに、力が欲しくなるんだよ!」
と言ってボクたちの背中をバンバン叩いた。力が強い。ちょっと痛い。
「ねね、力が欲しいって?」
すかさずサラミちゃんが先生に聞き返した。
目を輝かせて机に両手をついて、ピョンピョンと跳ねる姿がとってもかわいらしかった。
「まずは、力という概念を物理法則に組み込む! 物体に力が働いている時、物体の運動がどう変化するか、ってね!」
ボクたちはフンフンと先生の説明に聞き入った。
「一旦そうしておけば、後は簡単! 例えば『私が下向きに一定の力を加えている』という影響下でどうなるかは、力についての物理法則で決めることが出来る! 力と運動の関係を物理法則に加えておくだけで、『何かが物体に力を加えている』という形の影響をまるごと考慮できるわけ!」
というわけで、ボクたちは「力」が加わった時の運動の変化を決めることにした。
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