第2話 ちゃんと動くかな?
『物理法則1:止まっている物体は、他の影響がない限り、止まり続ける』
「じゃあ! 次は動きを入れてみようか! 石が1個あるだけで止まってると、動かないことがもう確定しちゃったね。じゃあ、どうしたら動きが入るかな?」
先生がそう言うと、ボクたちはまたウンウンと唸り始めた。
するとすぐにサラミちゃんがバアッと明るい顔を見せて
「最初から石が動いてればいいっ」
と言った。サラミちゃんが細い腕を振りかざすと、止まっていた石が動き出した。
―=≡● 「ビューン」
「そうね! さっき作った物理法則は、『止まっている物体』についてのルールだから、『動いている物体』については好きに設定できるわけ!」
と先生が言い、今度はサラミちゃんの肩を嬉しそうに叩いた。
サラミちゃんも照れくさそうに笑っていて、ボクはちょっとドキッとした。
「じゃあ最初から動いている石は、その後どう動くか決めようか!」
するとサラミちゃんがぴょんぴょんと飛び跳ねて手を上げた。
サラミちゃんの柔らかそうな髪がふわふわと舞った。
「ねね、あのね、そのまま、ずっと、動き続けるっていうのは? だめ?」
―=≡● 「ビューン?」
↓
―=≡● 「ビューン?」
「いいよ! 『そのまま』ずっと動き続けるんだね!」
先生がそう言うと、今度はさっきのルールの下に、新たな文字が浮かび上がってきた。
『物理法則2:動いている物体は、他の影響がない限り、【そのまま】動き続ける』
「れれ? 変なカッコ、ついちゃったよ?」
サラミちゃんが指をさす部分を見ると、確かに【そのまま】と書かれていた。
すると先生は両手を腰につけて、フフーンともったいぶりながら言った。
「失敗しちゃったね! このカッコは、意味が定まってない言葉に付くんだよ!」
そのまま、という言葉に何か問題があったのかな?
そう考えていると、ボクはふとあることを思い出した。
「さっきの石、ちゃんと『そのまま』動いてない!」
―=≡● 「ビューン?」
↓
―=≡● 「ビューン?」
その石の動きをもう一度よく見る。
左から右へ「ビューン?」と動く。
―=≡● 「ビューン?」
すると左に一瞬で戻ってまた右へ「ビューン?」と同じ道をたどる。
―=≡● 「ビューン?」
これじゃ何度も繰り返しちゃってるだけで、「そのまま」動いてくれてない。
普通に考えて、「そのまま」というのは同じ動きを繰り返すという意味じゃないのに。
「そうだね! じゃあハムくんが考えた『そのまま』っていう言葉は、どういう意味なんだろう?」
先生がそう問いかけたけど、どうしてかボクには手も足も出なかった。
普通に考えてそのまま、ということを、どうやって説明すればいいんだろう?
だって、普通は普通だもの、説明しようがないと思う。
こんなの、なぞなぞみたいなものだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます