始めに…
誠に申し訳ないですが、筆者様の作品の良さは若年層の読者には分からないと思います。
実は本作を読むのは2回目で、なぜ初回でなく2回目でレビューしたのかは、初回が★の数基準で選んだ筆者様の始めて読んだ作品であったため、
今回ほど感じる心の構えがなかったのだと振り返ります。
物語はたったの一場面に始まり、そこで終わります。
登場人物も"私と貴方"だけです。
読解力がなくとも中年の2人だと分かります。
されども2人が交わした言葉が、
彼ら彼女らだけが積み上げた大切な月日を物語るように味わい深く感じます。
若者だとか大人だとか関係はなくて、
年齢を重ねたところで、
純粋に「貴方の事が好きだからずっと側にいて欲しい」という表現に大袈裟な演出は必要ないのだと認識させられます。
本作では"しいたけ"が気持ちを届ける花束にとって代わるよう綴られています。
それは決して憧れのシチュエーションでもなく、スマートな演出でもありません。
それでも心に響くの良さがあるのです。
ところで子どもの頃に"しいたけ"は好きでしたか?
私は当時見た目と歯応えに何とも言えませんでしたが、
大人になった私は"しいたけ"の味わい深さが好きだと言えます。
さて、筆者様の作品を半分ほど読み終えた今だからこそ、そうではないかと思えるのですが、
それぞれの物語の一部はフラッシュバックした記憶を元に描いたノンフィクションであり、シリーズ物のように連鎖しているのではないかというところに敢えて注目してみます。
書籍化された作品も含めて、なんと素晴らしい愛に満ち溢れていることか…。
適齢期を過ぎたカップル、
綺麗事だけでは立ち行かぬ夫婦、
家族の在り方について、悩み疲れた方に、ぜひ一読頂きたい。
きっとその先に貴方の愛した本来の景色を思い出させる何かが映ると信じて。
ほのぼのとした空気の中で描かれる恋人たちのお話。
2人で鍋をつついている。
落ち着ついた雰囲気の中で進む話は読者に心地よさを与えてくれる。
ただ、途中で心臓をつかまれるというか、はっとさせられる文章があった。そこには非情な現実が垣間見える。それが、
担当の患者さんが亡くなられたときに必ず行く猫カフェ。
という一文。
看護師の彼女は、日々死と直面する環境の中で生きている。
そんな彼女だからこそ、避難場所が必要で、今はそこに彼も一緒に住んでくれている。
果たして彼はそこにずっと住んでくれるつもりだろうか。
そこに住まわせておいて、本当にいいのだろうか。
最後の3行を読んで、なぜだか僕がほっとしました。
タイトル見た瞬間、なぜ、私のしいたけ嫌いを
知ってるんですかーって、勝手に叫んでしまいたくなるくらい
もう、私にとっては、まるで 自分のものがたり。
子供の頃から めっちゃ苦手だから、
給食メニューの 材料名欄の しいたけに マーカーで印つけて
その日は 早めに並んで、せっせと ともだちの器に
みじん切りになって隠れようとしている しいさんを
一網打尽にする決意で スプーンで高速移動、してました。
でもね、こどもたちと 給食食べることになったら
大人の私は、何食わぬ顔で、食べちゃってるんですよ。
今でも ほんとはだめなのにね。だから、
私の相手は しいたけ受け取ってくれる人じゃないと だめ。
恋の数が少ない 不器用な二人の会話が 雰囲気あって
目を見て話すか、逸らしているか、ただそれだけで
相手の感情を 描き出す 新樫さんの文章が すごく好きだ。
そして、こんなプロポーズがあっても いいね。