静かなリズムと穏やかな空気の中で紡がれる、温かい感情

短くコンパクトにまとまっていて、その中でここまで穏やかかつ饒舌に愛を語るというのも中々難しい。恋愛小説というにはあまりに静かで短いものの、巧みな描写の中で浮き彫りにされてゆくお互いの感情が少しずつ現れてくるその様は落ち着いた大人同士の恋の理想形を見事に描き出している。
こんな穏やかで、優しい風が吹くような恋をしてみたいものだ。そう本気で思わせる筆致。小品ながら傑作である。

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