僕
目を覚ますとそこは病院で僕はベッドに寝かされていた。
額に痛みを感じて僕はその部分に触れる。
心電図の機械音が、僕の心に呼応する様に乱れる。頭を包帯で巻かれている。
いつ?
いつ怪我をしたんだろう?
思い出せない。
思い出せないけど、分かる。
僕は何かを失ってしまった。
とても大切な何かを。
心が血を流しながら、何かを求めるように震える。僕はその痛みに耐えられなくなって、泣き叫びながら頭の包帯を引きちぎり、額に出来た傷を掻きむしる。
この傷が僕を苦しめている。
縫われた傷の隙間から、血が滴り、僕のベッドを紅く染めていく。周りが騒がしくなり、多くの人の足音が聞こえてくる。
真っ赤に染まった僕の両手。
その両手を誰かに掴まれる。
君は誰?
その女の子の名前を僕は口にする。
「
深緋ちゃんはポタポタと流れていく僕の血に構うことなく真っ直ぐと僕の目を覗き込む。
「ねぇ、教えて!妹は最後に何を言ってたの?!」
深緋ちゃんの握る僕の両手に力が込められる。
「浅緋は、最後に何をあなたに託したの!?」
あわひ?誰の事だろう?深緋ちゃんに妹なんていないのに。喧騒と共に多くの人が僕のベッドに集まってきて僕から深緋ちゃんを引き剥がす。
彼女が必死に抵抗して、再び僕に掴みかかる。僕は深緋ちゃんの手に触れて、涙を流しながらその質問に答えた。
「
僕に掴みかかる深緋ちゃんの手に込められた力が急速に力を亡くしていく。僕のその言葉に周りの大人達がお互いに顔を見合わせている。深緋ちゃんのお母さんが、僕と彼女の距離をゆっくりと離していく。
静寂の中、深緋ちゃんが口を開いた。
「この人殺しっ!」
僕は赤く染る両手を見下ろす。その血の色は僕の罪の重さを現しているようだった。 僕は人殺し?
〆
八ッ森市連続少女監禁殺害事件 概要。
2005年5月8日、東京都八ツ森市に住む当時36歳無職の「
その場の状況証拠、本人の自供等から日本警察では彼が一連の少女誘拐監禁殺害事件の容疑者と断定。
法廷では一連の事件の被害者、少女五人の殺人罪及び死体遺棄、他の三人への傷害、逮捕及び監禁の罪により無期懲役の判決が一度下される。しかし、容疑者の精神障害が明らかになり、控訴審二審では一転し、無罪判決が言い渡された。
幼馴染と隠しナイフ 氷ロ雪 @azl7878
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